EYストラテジー・アンド・コンサルティング(EYSC)は1月17日、データサイエンスチームがライフサイクルアセスメント(商品の原料調達から、生産・流通・廃棄・リサイクルまでにおける環境負荷を定量的に算出するための手法)や計量経済学(経済関連データを対象とし、統計手法を用いて経済的関係性を実証・分析する学問領域)の知見を用いて、事故や災害などで損壊した車両の買い取りやリユース・リサイクルなどを手がけるタウの事業が創出する環境価値・社会価値の定量化を支援したことを明らかにした。
今回、支援を行ったEYSCのデータサイエンスチームは、統計・機械学習、計算機科学、経営工学、計量経済学など、データに基づいた意志決定を行うデータサイエンス関連分野における研究経験を持つメンバーで構成し、高度な分析を活用してビジネスの意思決定を支援するチーム。
計量経済学などを用い、タウの非財務情報開示を効果的にするための「CO2排出削減量の評価モデル」および「社会価値評価モデル」を構築し、定量化を支援した。
タウは通事故や災害などで損壊した車両(損害車)を損害状況に応じた最適な利用方法を判定してリユース・リサイクルする「カー・トリアージ」の実践を基幹事業としている。
同社では、カー・トリアージのもたらすCO2排出削減効果などの環境価値、新興国の経済発展への寄与度における社会価値をステークホルダーにとって理解しやすい形で示すことで、ステークホルダーの事業への理解を促進しようと各価値の定量評価を試みていた。
そこで、EYSCは(1)カー・トリアージにおけるCO2排出削減量のライフサイクルアセスメント、(2)カー・トリアージのもたらす社会価値の定量評価の2つの分野を支援した。
(1)に関しては、タウが推進するカー・トリアージでは損害車の修復や部品・素材の再利用を促進することで、CO2を大量に排出する新車の製造や部品・素材の新規生産の削減に貢献。
今回、同事業がCO2排出にもたらす影響を定量化するため、ライフサイクルアセスメントモデルを構築し、事業の上流・下流を含めたライフサイクルでのCO2排出削減への貢献度を定量化した。
また、ステークホルダーが理解しやすい結果の見える化を目的に、一般的な乗用車1台を新車ではなく再生車に変更した場合、平均的にどの程度のCO2削減を実現しているかを試算した。
(2)については、タウのカー・トリアージは新車より安価な損害車を輸出することで、新興国における自動車の普及を加速させ、モータリゼーションの進展に貢献していることから、EYSCのデータサイエンスチームの支援でタウの損害車主要輸出先であるモルディブを対象に、損害車輸出による失業率の改善度合い、1人あたりGDPの増加幅を定量評価した。
各国の失業率・GDP、およびタウの損害車輸出量はさまざまな要因が相互に影響しあって変化するため、一般的な集計のみでは正確に定量評価を行うことは困難であることから、計量経済学の手法を用いて信頼性のある社会価値の定量化を行うことに成功したという。