東京大学(東大) 国際ミュオグラフィ連携研究機構は1月13日、二次宇宙線「ミューオン」(ミュー粒子)を利用した、送受信者間で暗号鍵のやり取りを一切必要としない、まったく新しいタイプの超高セキュリティワイヤレス通信技術「COSMOCAT」の開発に成功したことを発表した。
同成果は、東大 国際ミュオグラフィ連携研究機構 機構長の田中宏幸教授らの研究チームによるもの。詳細は、物理・生命科学・地球科学などの幅広い分野を扱うオープンアクセスジャーナル「iScience」に掲載された。
ミューオンは、銀河系における超新星爆発などの高エネルギーイベントによって加速される(一次)宇宙線が、地球の大気圏に飛び込み、大気中の分子と衝突することで生成される二次宇宙線の1つとして知られている。電子やニュートリノなどのレプトン(軽粒子)の仲間で、荷電レプトンにおける電子に次ぐ第二世代の素粒子とされる。
ミューオンはニュートリノほどではないが透過力が強いため、人工構造物などをほぼ真空中の光の速度で貫通してしまう。その貫通力を利用し、近年はピラミッドなどの巨大人工物の内部探査や、火山のマグマの状況把握などに応用されて成果を上げている。
ミューオンの生成は、銀河系の磁場に何百万年もの間捕捉され続けてきた宇宙線が、少しずつ地球に染み出してきた結果とされるため、ミューオンの地球への到着時刻は、次にいつ来るかまったく予想できない「真性乱数」となる。田中教授は今回、その特性を利用し、超高セキュリティワイヤレス通信技術を開発することにしたという。