Google Cloudの日本初プレミアムパートナーであるクラウドエース。2020年にはセブン-イレブン・ジャパンにおけるIT戦略を支える基盤として始まったプロジェクト「セブンセントラル」の構築・運用を手がけるなど、Google Cloudの導入・開発・トレーニングをはじめ、1000社以上の企業を支援している。今回、クラウドエース 取締役会長も務める吉積ホールディングス 代表取締役社長(CEO)の吉積礼敏氏にインタビューの機会を得たので、その模様をお伝えする。
吉積 礼敏(よしづみ あやとし)
クラウドエース株式会社 取締役会長
東京大学工学部卒業後、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)に入社。大規模システム開発のインフラからアプリ開発・ERPパッケージの保守などを幅広く経験。アクセンチュア退職後2005年より吉積情報株式会社を設立し代表取締役に就任。
Googleに特化した業務システム開発を会社として手がけつつ、システムコンサルタントとして大規模プロジェクトマネジメントを歴任。2012年1月には、日本人としては初めてGoogle Apps Certified Development Specialistを取得。Google Cloud Platformの5資格についても日本人として初めて全取得。
クラウドエースの2022年の振り返り
--昨年はオフィス移転やインドへの法人設立、Web3領域のシステムインテグレーションに対応するなどの動きがありました。振り返ってみていかがでしょうか?
吉積氏(以下、敬称略):オフィス移転は、従来入居していたビルが建て替えを計画していたため、3年前に決定していました。
このタイミングで狙ったわけでなく、新型コロナウイルスの感染拡大もあったことから、改めてオフィスの価値を見つめ直すタイミングではありました。
そこで、1番大事にしたいと考えたことは、2022年初に刷新したビジョン、ミッション、バリューを体現するオフィスであることを意識しました。
とは言え、ビジョン、ミッション、バリューは概念的なことであることから、モノとして表すことは苦労しましたが、実現できていると思います。
--なぜ、ビジョン、ミッション、バリューを刷新したのでしょうか?
吉積:タイミングに特別な意味はないのですが、従来のビジョン、ミッション、バリューは私1人で4~5年前にラフに作成したものでした。ただ、もう少し考えて策定するべきだと考え、2020年後半に策定するためのプロジェクトを立ち上げました。
従来のものはトップダウンで決定した経緯もあり、もう1度考え直すために1年半ほど時間をかけて、社内を横断したプロジェクトチームにおいて多様なメンバーの意見を取り入れて新しく策定しました。
そして、タイミングよくオフィスの設計をしている段階だったことから、ビジョン、ミッション、バリューを盛り込みました。入社した人が使いにくいオフィスよりは、説明しやすいとともに納得感を持ってもらえるようにしました。
インドに法人を設立、Web3のシステムインテグレーションに対応
--そのような中で8カ所目の海外拠点としてインドに法人を設立しました。意図はどのようなものがありますか?
吉積:すでに海外ではベトナム、シンガポール、台湾、インドネシア、タイ、中国、香港に進出しています。
世界一を目指すにあたり、グローバルに進出していく必要があるという話は従来からしていました。そのなかで、インドは巨大市場かつ米国ほどレッドオーシャンではなく、早く進出すればするほど、勝てる確率が大きいと考えており、前々から候補には挙がっていました。
上場準備を進める状況下において、新規で海外進出はしづらい状況でしたが、巨大市場を押さえにいくために進出しています。ターゲットは、その国の事業会社としていますが、日系企業も含まれます。
--Web3のシステムインテグレーションについては、いかがでしょうか?
吉積:現在、レイヤがあがっているという認識でいます。これは、クラウドの次のレイヤを考えたときに、次はWeb3だと考えています。
クラウドだとインフラストラクチャレイヤまでの共有化ですが、Web3はアプリケーションレイヤ、データレイヤまでを共有するというイメージを個人的には持っています。
クラウドはオンプレミスから移行するということを確信して、現在の事業を行っていますが、Web3はそこまでではないにせよ一定のメリットが存在する分野は判然しないものの、アプリケーションやデータまでを含めて共有化した方が世の中のベネフィット、つまり公共に資すると思います。
そのため、NFT(非代替性トークン)などの盛り上がりに追随するわけではなく、レイヤが上がっていくものだと捉えています。
昔のようにデータセンターを共有化するというところから、サーバ、ラック、ASP(Application Service Provider)のような形でレイヤが変化し、そしてコンピューティングをはじめとしたインフラストラクチャまでがクラウドの世界観です。
そのため、今後はレイヤがさらに変化していくため1個の取り組みとしては面白いものだと感じています。Web3の実現を支援するための能力を身に付けることが主眼となっています。
2023年はエンタープライズ案件への注力と積極的な海外展開を計画
--2023年の展望について教えてください。また、個人的な抱負についてはいかがでしょうか?
吉積:日本では、エンタープライズの案件に対しては、一昨年にセブン-イレブン・ジャパンさんを支援し、昨年にはそうした経験でエンタープライズ案件に手応えを感じつつ、自信を持って組織として取り組めたことから、引き続き注力していきます。
また、海外は6カ国程度で現地法人の設立準備をしており、今年早々に登記が完了してビジネスを開始する予定です。
さらに、海外展開については毎年していきたいと考えており、すでに進出した初期の5カ国では利益を出せる状況となってきたため、かなりの手応えを感じています。これまではアジアが中心でしたが、欧米やそのほかの地域なども視野に入れています。
一方、2022年に組織が成熟してきたのは一定の成果ですが、遊びがなくなってしまっているため、クラウドエースとしてのカルチャーやブランディングなどに力を入れて、お客さまや採用候補者の方々にも“良い会社だね”と思われる取り組みを、業績とのバランスを見ながら進めていきます。
加えて、グローバル化に向けて組織再編も検討しており、管理体制などを見直すフェーズに入っています。さらなるグローバル進出に向けた準備を抜かりなく進めていきたいと考えています。
個人的な抱負としては、昨年は身体測定の結果をAにすることが目標でしたが、できなかったので今年は必ずAにしたいと考えています(笑)。
やはり、体が資本だと強く感じるため健康の維持管理に努めたいと思います。ジムも通っていたのですが、忙しくてそれどころではなかったので、継続したいです。また、海外現地法人の視察に行こうと考えた矢先に、新型コロナウイルスの感染拡大があったため、行きたいですね。