米国の産業用ガスアップサイクリング(回収・再生)専業のArencibiaと韓SKグループのガス供給会社であるSK materials airplusが合弁会社設立に向けた業務協約(MOU)を2022年12月に締結、2023年から韓国内で半導体製造用希ガスのアップサイクリング事業を共同で進めることを明らかにした。
1986年に設立されたArencibiaは、ビッグデータを活用したモニタリングと分析システムを活用し、産業ガスアップサイクリング事業を行ってきた。新たに設立される予定の合弁会社は、SK materials airplusがマーケティングと運営を引き受け、Arencibiaが設計とプロセス開発を担当する方向で運営される模様。アップサイクリングは、製鉄会社などから排出されるガスをリアルタイムで監視・分析した後、必要な希ガスのみを抽出する方法で行われる。
希ガスは空気中に微量に含まれる希薄なアルゴン、ヘリウム、ネオンなど6種類の気体元素をいう。空気中に極微量だけが含まれているため量産が難しいうえ、ウクライナや中国はじめ少数の国家だけで生産されており、地政学的リスクが発生した場合、韓国への供給が不安定になりかねない状況にあった。一部の希ガスは価格が前年比30倍ほど急騰するほど市場価格は不安定だ。
今後、合弁会社が設立され、希ガスを捕集、精製、再利用する工程が完成すれば、輸入に依存していた希ガスの国産化が可能となり、合理的な価格で供給を受けることができるようになることが期待される。半導体およびディスプレイ産業分野でも、国際情勢に伴う不安定に拘らず、より安定的に製品を生産できるという利点がある。
SK materials airplusのJong-jin Oh(オ・ジョンジン)代表は「需給が不安定で価格変動が激しい希ガスの特性上、アップサイクリングは安定成長のための最高のソリューションであり、Arencibiaとのコラボレーションにより、国内を越えてアジアと世界のアップサイクリング事業をリードしたい」と述べている。
今回の業務協約は、韓国政府の半導体素材国産化に沿った戦略であり、希ガスは、SKグループ内のSK hynixのみならず、Samsung Electronicsなど韓国内の半導体・ディスプレイメーカーなどへ供給される予定だという。韓国政府は、半導体材料の国産化あるいは外資誘致を国策として推進しており、ウクライナに依存度の高かった希ガスについては、国産化と外資提携はじめあらゆる可能性を検討し実施している。