AstroXと千葉工業大学(千葉工大)は12月21日、山口県宇部市の宇部協立産業が所有する採石場敷地内において、方位角制御を用いた気球からのモデルロケット空中発射試験を12月10日に実施し、成功したことを共同で発表した。
現在、宇宙産業が世界的に急成長しており、世界の市場規模は、現在の約40兆円から2040年には約120~160兆円になるという予測もあるほどだ。中でも、衛星を活用したサービスの拡大により、人工衛星への需要が大きく伸びている。日本国内だけでも複数の企業が小型SAR(合成開口レーダー)衛星を複数打ち上げて画像解析サービスなどを手がけており、各社とも今後さらに打ち上げ数を増加し、数十基によるコンステレーションが計画されるなど、小型衛星の打ち上げに対する需要は急増している。
しかし現在、日本国内では人工衛星を宇宙に運ぶロケットが不足しており、国内の小型衛星の大半が海外のロケットで打ち上げを行っている。この打ち上げ能力不足が日本の宇宙産業の大きな課題だという。このような課題を解決して日本の宇宙産業を一大産業に発展させられるよう、AstroXと千葉工大が研究開発を行っているのが、気球で成層圏までロケットを放球しそこからロケットの空中発射を行う「ロックーン方式」で衛星の軌道投入を行う高頻度・低価格での打ち上げサービスだ。
今回実施された試験は、その第一歩となるモデルロケットの空中発射実験であり、方位角制御を用いた気球からのロケット空中発射は、世界初の試みだったとしている。具体的な試験目的には、放球中の非係留気球にて姿勢制御を行った上で空中発射できるかどうかの確認がある。今回は吊り下げ条件などを変更して3機の打ち上げが実施され、3機とも成功したとのことだ。
両者は今後、今回の試験で得られた成果をもとに、サービスの大型化や高高度化を図るとしている。