「やらなければいけないと分かっていても、ついつい・・・」このような先延ばしの経験は誰にでもあるだろう。先延ばしはちょっとした罪悪感を伴うものだが、「必ずしも悪いことではない」という。The Conversationの記事「Procrastination: the cognitive biases that enable it – and why it’s sometimes useful」では、先延ばしの背後にある心理を分析している。
子供の頃の宿題や手伝い、大人になってからも社内や取引先への連絡や資料作成、あるいは自主的に取り組んでいるエクササイズや語学学習、やらなければと思いつつ、ついついソーシャルメディアで寄り道するーーなんて経験は誰にでもあるはず。
先延ばしすれば仕事に悪い影響がでたり、学生なら成績が悪くなる。あるいは、不安になることもあるだろう。そのようなネガティブな影響があるのに、なぜ人は先延ばしするのだろう。どちらにしてもやらなければならないとであれば、なおさらだ。
記事では、現在志向バイアスと現状維持バイアスという2つのバイアスから、先延ばしの心理を説明している。 1つ目の現在志向バイアスとは、2つの将来の瞬間の間のトレードオフを考えるときに、より早く起こる方を重要視する傾向だ。ダイエットをしようと思っていても、目の前にあるチョコレートを食べてしまうというのは、すぐに手に入る瞬間の喜びに目がいくためだ。本来なら、ダイエットに成功するという将来の喜びにフォーカスすべきだが、今すぐ手に入るチョコレートという喜びが優先されているということになる。
記事では、学生にすぐに150ドルをもらうか、6カ月後に200ドルもらうかと提示したところ、今150ドルをもらうことを選択した学生が多かったという実験も紹介している。
「我々は明日の大きな利益よりも、今日の小さな利益を選択するようになっている」と記事は記す。もちろん、個人差はあるだろう。
2つ目の現状維持バイアスとは、知らないものを受け入れたくないという心理だ。記事によると、本来、人間の脳は怠け者で、可能なら認知負荷を避ける方向に動くという。脳への負担が大きく、新しいものに取り組むよりも、リラックスする状態に留まろうとする。これが変化への抵抗につながる。
そのため、現状維持バイアスは損失回避バイアスにつながることもあるという。疑いがあれば基本的に何もしないように言い聞かせるからだ。
このような心理がわかったところで、先延ばしにどう対応するか?
記事では、先延ばしは「怠惰」ではなく、タスクを遅らせることは必ずしも悪いことではないと記す。不確実なことについて落ち着いて考えることにつながることもあるし、難しい感情を乗り越えるのに役立つ。最終的に良い結果につながることもある。