2022年12月7日から9日まで幕張メッセで開催された「高機能素材Week」内の「フィルムテックジャパン(高機能フィルム展)」で、オムロンは、シート検査装置の欠陥検出技術として特徴量分類とAI分類を組み合わせた分類技術「Dual Class AI」を紹介した。
近年は、保護フィルムやレジ袋のような民生品から、二次電池素材や電子基板材料などの工業製品まで、幅広い分野でフィルムへの需要が高まっている。特に近年は、EVの普及や自動運転システムの発達により、それらで使用される素材フィルム産業の成長が加速しているという。
しかし、製造業界共通の課題である高齢化や人手不足の影響はフィルム製造の現場にも及んでいる。特に、精密な全数検査による品質担保が求められるために、元来は人の目視で行われていたフィルムの品質検査は、熟練者の高齢化の影響を受けているほか、検査基準の属人化により適切な評価ができておらず、必要以上に歩留まりが低下しているという課題があった。
それを受けオムロンは、フィルム検査の自動化に貢献する独自のソリューションとして、Dual Class AIを開発したとする。
同社のブース担当者は、新技術の特徴として「特徴量分類とAIによる分類を使い分ける」点を挙げる。フィルム検査において発生する欠陥の大半は特徴量分類で十分検出できるといい、それでは分類が難しい欠陥にのみAIを活用するという方式になっているのだ。
またオムロンは、3種類の可視光と近赤外光という複数の波長を併用し独自のアルゴリズムを用いることで検出力と判別性能を向上させた多波長検査技術「マルチウェーブセンシング」も提供しており、この技術を使うことで「金属と非金属」や「ピンホールとゲル」などを精密に判別できるとのこと。これらの技術を融合させることで、「本当は高品質品として販売できるにもかかわらず通常品として販売している商品、本当は販売できるのに廃棄してしまっていた商品を正しく見分けることで、より効率的な販売につながるはずだ」と語る。
また、「検査基準の明文化」についてもメリットがあるとする。目視検査の場合には、担当者の感覚によって基準が左右されるため、定量的な言語化は難しい。また検査すべてをAIに委ねた場合には、AIが独自で検査基準を構築するため、基準のブラックボックス化が発生しうる。さらに、検査基準の変更があった場合には再度AIが初めから学習をやり直す必要がある点も課題だという。
一方の特徴量分類は、欠陥の形状や色などの特徴を数式化して分類するため、検査基準が定量的に明文化される。また、特徴量の設定を支援するツールも提供し、欠陥の種類(「しわ」「穴」「異物」など)ごとにシンプルな作業で特徴量を設定することが可能で、実装後の個別の編集も可能だとする。これにより、特別なノウハウを持つ技能者の育成が不要になり、属人性も解消できるとしている。
また前出の担当者は、欠陥の種類別に基準を設定できることで、データ学習期間の短縮による早期の実装にも貢献するとしており、「AIだけだと全種類の欠陥データを学習してからでないと実装できないが、この製品の場合は重要な基準のみ学習させてから実装を開始し、ほかの基準を後から加えることができるのが強みだ」と話した。
なお、ブースではパネルでの展示に加え、マルチウェーブセンシングによる金属と非金属の識別デモンストレーションが展示された。