キヤノンは12月20日、生産ラインにおける材料などの搬送物の移動量や速度を高精度に測定する計測機器の新製品として、新光学系を採用することで測定可能速度を向上させた非接触測長計「PD-710」を、2023年1月上旬に発売することを発表した。

  • 2023年1月の発売が発表された非接触測長計「PD-710」

    2023年1月の発売が発表された非接触測長計「PD-710」(出典:キヤノン)

プレス業界や製紙業界などでは、材料ロスの削減や製造機械の不具合による生産量低下を防ぐために、搬送物の長さや速さを正確に測定できる計測機器への需要が高い。中でも製紙業界では、トイレットペーパーやダンボールなどを正確な長さで切断するため、高速で搬送される中でもより高精度に移動量を測定したい、というニーズがあるという。

キヤノンは、生産ラインにおける材料の移動量や速度をリアルタイムで監視する計測機器を開発しており、2021年5月にも非接触測長計「PD-704」を発売している。同製品は、キヤノンが独自開発した測定方式の「プロファイルマッチング方式」を採用し、1秒間に4000枚の画像データを取得することで対象物をモニタリングする。また非接触であるため、対象物の傷や摩擦などを防ぐとしている。しかし、より高速な搬送が行われる製紙現場での監視に対しては、PD-704の測定可能速度では対応できなかったとのことだ。

そこで同社は今般、紙の生産現場における監視にも対応した新製品として、PD-710を開発。同製品には新光学系を採用し、光学倍率を低くすることで測定可能速度の範囲を拡大し、前世代製品の約2.5倍となる±10m/sまでの速度に対応するという。また、性能は向上したものの製品サイズは変わらないとしている。

  • 製紙ラインにおけるPD-710の導入イメージ

    製紙ラインにおけるPD-710の導入イメージ(出典:キヤノン)

  • 新製品は計測可能速度範囲を拡大したものの、製品サイズは前世代製品と同じだという

    新製品は計測可能速度範囲を拡大したものの、製品サイズは前世代製品と同じだという(出典:キヤノン)

併せて、新製品に同梱されるソフトウェア内のパラメータを使用することで、搬送方向に対し垂直方向の微小なずれの測定や、反射率の高低により測定が難しい素材への対応も可能だとする。キヤノンの事業担当者によると、これらの機能は従来品に対して寄せられたニーズを受けて搭載されたものだという。

なお、新製品はオープン価格で販売されるとのことだが、同社は75万円程度を想定しているとのこと。約60万円だった前世代品からは上昇しているものの、顧客からは従来から倍増すると予測していたとの声も聞かれたという。

前出の事業担当者は、新製品の顧客ターゲットとしてやはり製紙業界を挙げ、性能向上を受けた同社既存製品からの置き換えを狙うのではなく、新たな顧客の獲得に注力していくとする。また併せて、「生産ラインを数多く保有する大企業から、1つのラインで生産を行う町工場のような中小企業まで、幅広い顧客に対してこの製品を提供していきたい」と語った。