凸版印刷は12月19日、製造データを含む複数のデータセットを用いて、古典と量子の2種類の機械学習モデルを各々構築した結果、両者の学習モデル構築過程に有意差があることを証明できたことを発表した。

同成果は、凸版印刷の友野孝夫氏、同・夏堀智子氏らの研究チームによるもの。詳細は、量子技術全般を扱う学術誌「EPJ Quantum Technology」に掲載された。

近年、AIを用いてビッグデータの分析や予測などが行われているが、その正確さはデータの量・質・特性とAIの学習状況に左右され、データの前処理とパラメータの調整に時間を必要とする。効率的な分析・予測が求められている中で、AIに量子コンピュータを利用することにより、学習速度や学習性能のさらなる向上が期待されている。

製造現場の画像を用いた品質検査では、AIを用いた機械学習の導入が増えており、適切な学習モデルを生産現場に適用させることが求められているが、そのためには、少量の学習データで学習モデルを構築できる手法の開発が重要とされている。

そうした課題に対し、同社は量子技術を活かした量子機械学習の研究を進めてきており、今回の研究では、そうした課題に対して製造データを含む複数のデータセットを用いて、古典と量子の機械学習モデルを各々構築し比較を試みることにしたという。

具体的には同社工場の製造工程に適用した結果、量子と古典の学習モデル構築過程に有意差があることが確認されたとする。この結果を踏まえ同社では、同手法を活用することで、対象となるデータセットごとに、古典機械学習と量子機械学習のどちらが適正なのかを迅速に判断することが可能になるとしている。

なお同社は今後、量子機械学習技術を、製造だけでなく、品質検査や出荷検査、物流などの工程にも展開し、実データを用いた検証を進め、量子機械学習の可能性を探り、次世代のデジタル社会の実現に貢献していくとしている。

  • 仮説ROC空間における量子的・古典的学習過程

    仮説ROC空間における量子的・古典的学習過程 (c) TOPPAN INC.(出所:凸版印刷Webサイト)