NEXCO中日本は12月16日、現在建設中の「E1A新東名高速道路(海老名南JCT~御殿場JCT間)」に関する第5回連絡調整会議を開催したことを報告し、2023年度内を見込んでいた同高速道路の全線開通予定時期を、2027年度に見直したことを発表した。
神奈川県~静岡県~愛知県を結ぶ新東名高速道路の最後の工事区間である海老名南JCT(神奈川県)~御殿場JCT(静岡県)間では現在、首都圏中央連絡自動車道(圏央道)と接続する海老名南JCT~新秦野IC間(神奈川県)と、新御殿場IC~御殿場JCT間(静岡県)がすでに開通済みだ。
残りの未開通区間は、新秦野IC~新御殿場IC間の延長25kmとなっている。同区間は橋梁区間が約2割、トンネル区間が約5割と構造物の比率が高く、特に神奈川県松田町や山北町の近辺では急峻かつ狭隘な山岳地形となる中、大規模な橋梁やトンネルの工事が進められている。
新東名高速の開通は当初の予定から幾度も延期されており、今回の延期は、新秦野ICの西側に位置し松田町と山北町が接する付近にある高松トンネルにおいて、脆弱な地山や断層破砕帯が確認されたことが主な理由だ。
脆弱な地山とは、具体的には同トンネル内に点在する緑色凝灰岩を指す。この岩は地山の状態では安定しているが、掘削後に水に触れると浸水崩壊したり膨張したりする性質が強く、トンネル内空断面の変形が発生しているという。
また断層破砕帯とは、ずれの発生した断層面に沿ってできている岩石が破砕された連続部分のことをいう。断層破砕帯では、やはりトンネル内空断面の変形が発生していることに加え、トンネルの天端(てんば:頂部のこと)や切羽(きりは:掘り進んだ最先端部)が崩落し、土砂の落下が起きているとする。
こうした脆弱な地山と断層破砕帯の影響で作業における安全性が脅かされているために工事が難航しており、専門家に相談しながら慎重に工事を進めているとしている。
高松トンネルは上り線側での延長が2851mであり、掘削工事は松田町側から山北町側に向かって進められており、2022年12月現在では約半分の1400m強まで到達している。この工事では、これまで4か所の断層破砕帯を通り抜けてきたが、残りの未掘進区間には、追加で実施されたボーリングや空中電磁探査により、既往調査で把握できなかった断層破砕帯が5か所あることがわかっている。
NEXCO中日本は今後、これまで掘進済み区間の施工実績を踏まえ、工事の安全性やトンネル本体の長期の耐久性を高めるため、追加調査により把握された未掘進区間の地質や断層破砕帯に対応した対策工や補助工を選定し、専門家に妥当性を確認した上で慎重に掘り進めていくという。
脆弱な地山の対策工としては、掘削面の崩壊防止や地山の緩みの抑制に効果的な「鏡吹付コンクリート」や、早期に断面を閉合することでトンネルの変形を抑制して安全性を確保する「インバーストラット」が実施されている。
また断層破砕帯の対策工としては、地山安定のために掘削断面上部に鋼管を建て込んで薬液を注入する「長尺鋼管フォアパイリング」や、掘削面を安定させるためにコンクリート吹き付けした鏡面に削孔してボルトを設置する「鏡ボルト」などが行われているとした。
NEXCO中日本は、引き続き安全を最優先に工事の進捗を図りながら工程短縮に努め、1日も早い開通を目指すとしている。