米サンフランシスコで12月3~7日に開催された「第68回IEEE国際電子デバイス会議(IEDM 2022)」において、ベルギーimecは、5G/6G無線通信向け先端RFデバイスの3次元熱輸送の予測に向けた、詳細な熱キャリア分布を用いたモンテカルロ・ボルツマンモデリングを発表した。
GaN高電子移動度トランジスタ(HEMT)とInPヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT)のケーススタディでは、ピーク温度上昇が、バルク材料特性を用いた従来の予測の最大3倍であることが判明したとするほか、新たに開発したツールが、次世代RFデバイスを熱的に改善した最適設計に導くための指針として有効であることが示されたともしている。
同成果は、imecの研究者であるBjorn Vermeersch氏による熱モデリング、ならびにNadine Collaert氏による次世代大容量無線通信用GaNおよびInP技術に関する招待論文としてそれぞれ発表された(論文11.5および15.3)。
GaNおよびInPベースのデバイスは、その高い出力パワーと効率性から、それぞれ5Gミリ波および6GサブTHzモバイルフロントエンドアプリケーションの候補とされている。これらのデバイスをRFアプリケーションに最適化し、費用対効果を高めるために、III/V族半導体技術をシリコン・プラットフォームにアップスケールし、CMOS互換にすることに注目が集まっている。しかし、微細化と電力レベルの上昇に伴い、発熱が信頼性における大きな問題となり、RFデバイスのさらなる微細化が制限される可能性がある。
imecのアドバンストRFプログラムディレクターであるNadine Collaert氏は、「GaNやInPベースのデバイスの電気的性能を最適化する設計は、高周波での熱性能を悪化させることが多い」と指摘している。「例えば、GaN-on-Siデバイスでは、最近、電気的性能で大きな進歩を遂げ、GaN-on-SiCデバイスと同等の電力付加効率と出力電力を達成したが、デバイスの動作周波数をさらに上げるには、既存のアーキテクチャを小型化する必要がある。しかし、このような狭い多層構造では、熱輸送がもはや拡散的ではなく、正確な自己発熱の予測は困難である」としており、「imecによる新しいシミュレーションの枠組みは、GaN-on-Siの熱測定とよく一致し、ピーク温度上昇が従来の予測の3倍にもなることを明らかにした。このシミュレーションは、開発の初期段階でRFデバイスのレイアウトを最適化し、電気性能と熱性能の適切なトレードオフを確保するための指針を与えてくれるだろう」と述べている。
また、このような指針は、新しいInP HBTにも有効であるともしている。imecのモデリングの枠組みでは、複雑なスケールのアーキテクチャにおける自己発熱に、非拡散的な輸送が与える影響を明らかにしており、これらのデバイスでは、ナノリッジ・エンジニアリング(NRE)が、電気性能の観点から興味深い異種集積のアプローチとなっているとする。imecの熱モデリング・特性評価チームの主要技術スタッフであるBjorn Vermeersch氏は、「テーパー状のリッジボトムは、III-V族材料内の欠陥密度を低くできる一方で、基板に向かう熱除去のボトルネックになっている」と説明しているほか、「NRE InP HBTの3Dモンテカルロシミュレーションによると、リッジトポロジーは、同じ高さのモノリシックメサと比較して、熱抵抗を20%以上増加させることがわかった。さらに、我々の解析は、リッジの材料(例えば、InPとInGaAs)が自己発熱に直接影響することを明らかにし、熱的に設計を改善するための新たな手掛かりを提供する」と述べている。