国立天文台(NAOJ)は12月15日、恒星級ブラックホールが時間とともにどのようにして銀河中心の大質量ブラックホールにまで成長するのかを予測するため、機械学習を用いて導き出した何百万という成長法則の観測を行い、その中から現実の観測と一致するものとして、ブラックホールは宇宙誕生から数十億年の間が最も活発で、それ以降はたいへんゆっくりと成長することを確認したと発表した。
同成果は、米・アリゾナ大学のHaowen Zhang博士課程学生、同・大学 スチュワード天文台のPeter Behroozi准教授(NAOJ プロジェクト研究員)らの国際共同研究チームによるもの。詳細は、英国王立天文学会が刊行する天文学術誌「Monthly Notices of the Royal Astronomical Society」に掲載された。
我々の宇宙に存在するほぼすべての銀河の中心には、天の川銀河における「いて座A*」のように、太陽質量の数十万倍から最大で100億倍程度といわれる大質量ブラックホールが存在すると考えられている。この大質量ブラックホールがどのように誕生したのか(成長してきたのか)という点と、それが属する母銀河の成長とはどのように関係しているかといった点は、これまでのところよくわかっていない。そこで研究チームは今回、機械学習を用いて、大質量ブラックホールと母銀河のつながりを導き出すことにしたという。
研究チームは、まず大質量ブラックホールが時間とともにどのように成長するのかを予測するための機械学習の基盤を構築し、それを用いて多数の成長法則の提案を行った。続いてそれらの法則を用い、1つの仮想宇宙において、何十億個ものブラックホールの成長がコンピュータによって再現された。最後に仮想宇宙を「観測」し、実際の宇宙で観測されるブラックホールと特徴が一致するかどうかのテストが行われた。
このようにして何百万もの法則のテストを通じ、既存の観測結果を最もよく説明できる法則が選び出された。その結果、大質量ブラックホールの成長は、宇宙誕生から数十億年の間が最も活発で、以降は非常にゆっくりと進むことがわかったという。
銀河については、宇宙誕生から数十億年で新たな星を形成する速度がピークに達した後、時間とともに鈍化し、やがて星形成が停止するという振る舞いを示すことが以前から知られていた。今回の研究では、大質量ブラックホールも母銀河と同じ時期に成長し、その後に成長が止まることが示された。研究チームはこのことから、数十年にわたって唱えられてきた、銀河におけるブラックホールの成長に関する仮説を裏付けるものだとする。
しかしこの結果は、新たな疑問を誕生させるきっかけにもなったという。ブラックホールが銀河と同時期に成長するためには、スケールが大きく異なるガスの流れを同期させる必要があるため、ブラックホールの大きさが母銀河と比べると圧倒的に小さいことが問題になるという。研究チームは、ブラックホールと銀河がどのようにしてそのバランスを保っているのか、今後の研究による解明が待たれるとした。