キャベツなどの葉にアミノ酸を吹きかけると、空気や水分の出入り口である気孔を狭めて細菌の侵入を抑え、葉が黄色くなったり壊死したりする「黒斑細菌病」の予防に効果があることを発見した。筑波大学の研究グループが発表した。被害が深刻になる中、耐性菌の心配のない対策として有望という。
キャベツや白菜などアブラナ科の野菜の黒斑細菌病対策には、抗生物質などが使われている。しかし耐性菌の出現を助長するなどの問題があり、新たな方法が求められてきた。
そこで研究グループは、天然化合物のアミノ酸を使った防除法の開発に挑んだ。生物の体を構成するアミノ酸20種類を、キャベツの葉に吹きかけた。その結果、14種類で黒斑細菌病の症状や、キャベツの中の細菌数が抑えられた。
この14種類は、葉を黒斑細菌病の細菌の入った液に浸した場合に効いたが、液を葉の中に注入してしまうと効果がなかった。細菌が植物の体に入る前にだけ、効果があるとみられる。またこれらのアミノ酸が、細菌の主な侵入場所である気孔を狭めることも分かった。
14種類のうち気孔を特に顕著に狭めたシステイン、グルタミン酸、リシンの効果を調べた。何もしない場合に比べ、気孔の幅と細菌の侵入数のどちらも減っており、両者に正の相関があった。
侵入する細菌が減っても、葉の中で著しく増殖してしまうことも考えられる。これも調べたところ、初期の侵入数と増殖の最高値の間に正の相関があり、多く侵入するほど症状が激しかった。何らかの方法で初期の侵入を抑えることが、病気の予防に重要とみられる。
一連の結果から、一部のアミノ酸が気孔を狭め、細菌の侵入を抑えることが分かった。グルタミン酸などは葉に与える肥料として既に広く利用されている。今回の成果から、細菌の防除効果が認識されないまま、この種の肥料が現に農業に役立ってきた可能性もあるという。多くの細菌や一部の真菌も、主に気孔から入る。安価なアミノ酸を利用したこの方法は、さまざまな病害の予防に有効で、持続可能な農業に役立つと期待される。
研究グループの筑波大学生命環境系の石賀康博助教(植物病理学)は「他にもさまざまな物質が気孔を狭める可能性がある。細菌の侵入を制御できる物質を探したり、侵入しにくい形の気孔を持つ品種を作ったりすれば、より良い農業につながるのでは。気孔をうまく制御することで、世界的に問題化しているさまざまな細菌病を防げるだろう」と述べている。
成果は国際植物学誌「プラントサイエンス」の電子版に11月25日掲載され、筑波大学が29日に発表した。
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