Preferred Networks(PFN)は12月14日、深層学習を高速化するディープラーニング・プロセッサ「MN-Core 2」を発表した。
同社が、神戸大学大学院 理学研究科 惑星学専攻の牧野淳一郎教授らの研究チームと共同開発した「MN-Core」シリーズは、深層学習の特徴である「行列演算」に最適化した専用チップ。チップの演算器数を最大化するため、ネットワーク制御回路やキャッシュコントローラ、命令スケジューラなどの機能を内包せず、コンパイラにその機能を持たせて最小限の機能に特化することで、コストを抑えながら、深層学習における実効性能を高めている点が特徴だとしている。
前世代の「MN-Core」を搭載して2020年に稼働した同社のスーパーコンピュータ「MN-3」は、海洋研究開発機構 横浜研究所 シミュレータ棟に設置され、2020年6月から2021年11月までの間、スーパーコンピュータの省電力性能ランキングGreen500において1位を獲得し続けた実績を有する。
複雑化していく現実世界の課題を解決していくためには、深層学習モデルの精度と演算速度の向上を継続して行っていく必要があり、継続的な計算資源の確保と効率化が重要になるという。そこで同社は、その取り組みをさらに発展させるため、深層学習のワークロードに最適化したMN-Coreの後継機として、さらに小型で世界最高水準の消費電力あたりの演算性能を有するディープラーニング・プロセッサとして「MN-Core 2」を、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の業務委託として開発を実施。現時点では、量産化段階に入ったとしている。
MN-Core 2は7nmプロセスを採用し、前世代(12nmプロセス)のMN-Coreと比べてチップサイズを39%縮小することに成功。これにより、データセンターのラックあたりの演算性能では約3倍に、電力性能(GFlops/W)では約33%向上させることが可能になったとする。すでに画像認識や材料探索など、同社の実用的なワークロードにおいてMN-Core 2の動作確認は完了しており、今後、深層学習モデルのさらなる精度向上と高速化が期待できるとしている。
同社では、MN-Core 2を搭載した新しい大規模クラスター「MN-4」の2024年度中の稼働に向けた作業を進めていくことを予定しているほか、2023年春をめどに、パートナー企業向けにMN-3の計算資源の提供を開始することも計画しているとしている。また、将来的には、MN-Coreシリーズをクラウドサービスとして提供し、順次ユーザーを拡大していく予定ともしている。
なお、PFNの西川徹代表取締役最高経営責任者は今回の発表に際し、「PFNは、2020年に稼働を始めたMN-CoreおよびMN-3の検証、ソフトウェアスタックの開発を進め、実用的な深層学習ワークロードにおいて顕著な成果を上げてきました。これまでは自社プロジェクトでの活用に制限してきましたが、今後は、この世界最高水準の電力性能を持つMN-Coreシリーズをより困難な課題を共に解決していくため、パートナー企業様から始めて一般の企業にも順次提供していきます」とコメントしている。