NXPジャパンは12月14日、Matter対応ワイヤレスMCUの新製品として「RW612」および「K32W148」を発表した。この発表に先立ち報道関係者向けに事前説明会が行われたので、こちらをベースに2製品の内容をご紹介したい。

  • どちらもMatter対応RFが搭載される

    Photo01:どちらもMatter対応RFが搭載されるが、RW612はWi-Fi 6に対応、K32W148はWi-Fi未対応の代わりにZigBeeサポート、と若干スペックが異なる

2製品ともにMatter対応のRFまで統合した1チップ製品である。面白いのは、RW612はi.MX RTシリーズのCrossover MCUとされ、一方K32W148は通常のMCU扱いであることだ。ただ実はどちらもベースとなるのはCortex-M33コアである(Photo02,03)。ではCrossover MCUか否かは何で決まるのか? と思ったら、Flashが外付けなのがCrossover MCUとの事であった。

  • RW612の概要

    Photo02:RW612は最大260MHzのコアが入るが、その代わりRFやSecurityには専用コアは入らない、Single Core構成。またProgram Flashも外付けである(QSPI I/Fが左側にあるのが判る)。ちなみにRW612にはThreadを省いたデュアルバンド品「RW610」も用意されている

  • K32W148の概要

    Photo03:K32W148は最大96MHz駆動だが、その代わりRFとSecurityにはそれぞれ専用のコアが入るので、このあたりは完全にオフロードできる事になる

そのRW612であるが、こちらはEnd node向けというよりはむしろBorder Routerなどに向けた製品である(Photo04)。

  • RW612は外付けフラッシュが必要

    Photo04:Border Routerの処理をさせるためにもプロセッサ性能は高めにする必要があり、すると内蔵Flashでは間に合わないのでQSPI接続で外付けFlashとした、というあたりだろう

Wi-Fi 6を搭載というあたりは完全にInternet接続を意識したものである。そのBorder Routerにしても、低コスト向けにBorder Router兼Application ProcessorとしてRW612を単独で使う事も、RW612をBorder Router専用に割り当て、別にApplication Processorを組み合わせる事も可能となっている(Photo05)。

  • 設計の柔軟性を高める事が可能

    Photo05:コストを取るか、性能と消費電力を取るかという辺りになる訳だが、どちらとしても使える、というのは確かに設計の柔軟性を高める事につながる

一方のK32W148は、End node向けのプロセッサである。こちらはRFとSecurityはそれぞれ別チップを配する3コアアーキテクチャであり、またセキュリティもEdgeLock Secure Enclave(RW612はEdgeLock Secure Subsystemな事に注意)が搭載されている。こちらはより省電力かつ低コスト向けの製品向けであって、それもあって消費電力が大きくなるWi-Fiのサポートを外し、ZigBee/Thread/BLEでの接続という形になっているという訳だ。

  • アプリ開発者からはCortec-M33コアのみ見える形

    Photo06:ただアプリケーション開発者から見れば、96MHz駆動のCortex-M33が1つ見えるだけで、RFやSecurityのプロセッサはAPIの先にあって見えない形になる

NXPによる両製品の想定されるマーケットがこちら(Photo07)。

  • 数が出るのはK32W148と想定される

    Photo07:数が出るのはK32W148で、RW612はコントローラ類などへの採用を考えて居る感じだ

低コストが必要とされるところはK32W148、Wi-Fiのサポートとか処理性能/機能が求められる部分にはRW612という形で棲み分けを考えているようだ。同社はこのRW612とK32W148を他の製品と組み合わせてMatter対応プラットフォームとして広範に展開してゆく予定(Photo08)であり、2023年1月にラスベガスで開催されるCES 2023ではRE612やK32W148を利用したデモが展示される予定との事である。

  • 2製品ともにMatter認証は後日を予定

    Photo08:ちなみにRW612/K32W148ともに、現時点ではまだMatterの認証を取得できていない(Photo06にも言及がある)が、これは後追いで認証を取得予定との事である

  • リモコンとかスイッチだとK32W148だと厳しい

    Photo09:やはりリモコンとかスイッチだとK32W148だと厳しい(&Border Routerの機能が無いと不便)ということであろう

ちなみにRW612/K32W148ともに、すでにサンプル出荷が開始されており、また評価用ボードも準備中(Photo10,11)との事。ただし価格は現時点ではまだ未公開である。

  • RW612の評価ボード

    Photo10:NXP提供のRW612の評価ボードの写真。左上の一番大きなチップがRW612である

  • 評価ボードの実物

    Photo11:評価ボードの実物。撮影時は試作段階のためRW610(Dual Band Radio搭載)とシルクされたものが実装されていたのだが、出荷時にはRW612の一番上のグレード(3種類のパッケージが用意されており、GPIOの数が異なる)のものが実装される予定との事であった