東京工業大学(東工大)、北海道大学(北大)、東京大学(東大)の3者は12月13日、Cb型小惑星「リュウグウ」の銅および亜鉛の同位体組成を測定し、太陽系外縁部に由来するリュウグウ的な物質が地球にも存在し、それは地球質量の約5%に相当することを突き止めたと発表した。

同成果は、東工大 理学院 地球惑星科学系の横山哲也教授、北大大学院 理学研究院の圦本尚義教授、東大大学院 理学系研究科の橘省吾教授らが参加する100名弱の国際共同研究チームによるもの。詳細は、英科学誌「Nature」系の天文学術誌「Nature Astronomy」に掲載された。

Cb型小惑星「リュウグウ」における特に重要な発見は、その鉱物組成、化学組成、および同位体組成において、「イヴナ型炭素質隕石」とほぼ一致する点が見られた点だという。

太陽系の起源や進化を調べる研究において、隕石の化学組成や同位体組成は有益な情報となる。中でも、イヴナ型炭素質隕石はすべての隕石の中で最も始原的かつ太陽に最も近い化学組成を持つと考えられており、極めて重要な研究対象となっている。

しかし、地球上にある約7万個の隕石の中でイヴナ型炭素質隕石はわずか9個しか見つかっておらず、貴重な存在であることが研究の障壁となってきた。リュウグウとイヴナ型炭素質隕石が近い化学組成・同位体組成を持つことが明らかとなったため、リュウグウも太陽系の起源研究に寄与する重要な役割を持つことが期待されている。

しかし、リュウグウとイヴナ型炭素質隕石との類似性がすべての元素で確認されたわけではないという。特に、これまでに測定されたリュウグウの同位体組成は、凝縮温度が862℃を超える難揮発性元素(チタン・クロム・鉄など)および392℃以下の揮発性元素(酸素・炭素・窒素など)であり、中程度の揮発性を持つ元素群に関しては同位体組成が測定されてこなかった。そこで研究チームは今回、凝縮温度453℃である亜鉛および764℃である銅に着目。リュウグウ、イヴナ型炭素質隕石、およびそのほかの隕石の同位体組成を精密測定することにしたとする。

  • リュウグウ試料、イヴナ型炭素質隕石(CI、紫の範囲内)、およびそのほかの炭素質隕石(C-ung、CM、CV、CO)の銅および亜鉛同位体組成

    リュウグウ試料、イヴナ型炭素質隕石(CI、紫の範囲内)、およびそのほかの炭素質隕石(C-ung、CM、CV、CO)の銅および亜鉛同位体組成。リュウグウとイヴナ型炭素質隕石は誤差の範囲内で同一の同位体組成を持つが、その他の炭素質隕石は異なる同位体組成を持つことがわかる。Alais、Orgueil、Tarda、Murchison、Allendeはそれぞれ隕石名。((c) Paquet et al.,2022を一部改変) (出所:東工大プレスリリースPDF)