天地人と神明の両者は12月12日、笑農和(えのわ)との協業により衛星データなどの宇宙技術とIT技術を組み合わせて栽培してきた「宇宙ビッグデータ米」の収穫が完了し、12月7日より、神明の直営店「米処四代目益屋」と、JAXAグッズや宇宙食・宇宙グッズを扱う「宇宙の店」にて順次販売を開始することを発表した。
農業に関わる人々、そして農業には直接関わらないものの関心がある人々が、共通して抱いている危機感がある。それは、日本人の主食であるはずの米が、今後不足する可能性があるというものだ。地球上でも史上例を見ないほどの超高齢社会の先頭を猛進する日本は、すでにあらゆる業種において、その従事者の高齢化および不足が大きな問題となっている。農業もその例に漏れず、生産者の高齢化と減少にともなって、米以外を含む日本の食料自給力の大幅低下への懸念が叫ばれている。それに加え、温暖化や気候変動の影響により、米などの生産量が減少するという予測もある。
そうした中、地球観測衛星のデータを活用した土地評価エンジン「天地人コンパス」を運用するJAXA認定ベンチャーの天地人は、米卸で国内大手である神明と、スマート水田サービス「paditch(パディッチ)」を提供する農業ITベンチャーの笑農和と協力し、将来的な米の生産増につながる農業施策として、宇宙技術とIT技術を活用した農業を確立する「宇宙ビッグデータ米」プロジェクトを実施中だ。
同プロジェクトが目指すのは、3社の強みを活かした"ハイテク米作り"である。天地人は「天地人コンパス」を活用し、神明の独自品種の栽培最適地を日本全国から探索した結果、山形県鶴岡市での栽培を決定。栽培には、スマホで水管理を自動化できる笑農和のpaditchが活用された。これにより、夜間の冷たい水を何時間取り入れることが水温にどのような影響を与えるかを把握し、自動制御を実施したという。
そして2021年に続いて2022年も収穫時期を終え、「宇宙(そら)と美水(みず)」と名付けられた宇宙ビッグデータ米の販売がスタートした。なお、2022年に収穫された宇宙ビッグデータ米は、米の美味しさを表す指数の1つである「食味スコア」(静岡製機「AG-RD食味計」で計測)において、トップブランドと遜色ないスコアを獲得し、美味しい米を収穫できたとしている。
宇宙と美水は、関西に4店舗を展開する神明の直営店「米処四代目益屋」と、JAXAグッズや宇宙食・宇宙グッズなどを販売する「宇宙の店」で、順次販売が開始される。なお、商品ラインナップは2合(300g)・1kg・2kg・5kgの4種類が用意されており、宇宙の店では2合(300g)が税込み648円だという。
今回の販売に対し、神明の古満孝雄氏は、「2022年は低日照など、例年とは違う天気でしたが、粒ぞろいで艶のいい新米に仕上がりました。2023年も、自然の変化にあわせて異常気象にも負けない美味しいお米をお届けします」とコメントしている。
古満氏のコメントにあるように、宇宙ビッグデータ米は2023年も継続して栽培され、さらに面積を増やして取り組むとしている。
また宇宙ビッグデータ米プロジェクトの目的の1つは、「気候変動に対応したブランド米を作ること」だという。近年は地球温暖化により高温障害が多発しており、米の外観品質の劣化と食味の低下が懸念されている。同プロジェクトではこの問題について、圃場選びや水の管理で回避できると考えており、引き続き宇宙技術とIT技術を組み合わせた栽培方法が有効かどうかを実証していくとした。