山形大学(山形大)は12月9日、人間・ラクダ科動物・鳥・シャチ・ネコ科動物・蛇などの地上絵168点を、南米ペルーのナスカ台地とナスカ市街地近郊で新たに発見したことを発表した。
同成果は、山形大の坂井正人教授(文化人類学・アンデス考古学)、ペルー人考古学者らの国際共同研究チームによるもの。
現在、ペルー文化省から正式に調査許可を取り、ナスカ台地で学術調査を実施しているのは、世界で唯一、坂井教授らの研究チームのみだという。2012年にはナスカ市に「山形大学ナスカ研究所」を設立し、2015年には、ペルー文化省と山形大の間で地上絵の保護と学術研究に関する協定を締結。ちなみに山形大は、2004年から2018年の間にも、190点の動物や人間などの地上絵を発見している。
今回の現地調査は、2019年6月から2020年2月にかけて実施された。同調査では、航空レーザ測量によって得られた高解像度画像の分析、ドローンを活用した現地調査、調査データの分析によって、ナスカ台地とナスカ市街地付近において168点もの地上絵が発見された。なお、それらのモチーフは、人間、ラクダ科動物、鳥、シャチ、ネコ科動物、蛇などだったといい、紀元前100年~紀元300年ごろに描かれたと考えられるという。
今回の発見により、山形大が発見した地上絵は358点に上った。また今回発見された168点のうち36点は、遺跡公園の設立されたナスカ市街地近郊のアハ地区にて発見された。同遺跡公園は、山形大が2014年と2015年に公表した合計41点の地上絵を保護するため、ペルー文化省と山形大による前述の協定に基づき、両者共同で設立されたものである。今回の発見により、この遺跡公園には合計77点もの地上絵が集中していることが判明した。
地上絵は、地表に広がる黒い石を除去して、下に広がる白い砂の面を露出することによって制作されたものだが、制作方法は2種類あり、線状に石を除去するタイプと、面状に石を除去するタイプに分かれる。今回発見された地上絵のうち、前者のタイプの地上絵は5点だけで、後者タイプの地上絵が163点を占める。後者は10m以下の小型の地上絵で、小道沿いに分布する傾向があるという。
坂井教授らの研究チームは、現在、IBM T.J.ワトソン研究所と共同で、AIを用いたナスカ地上絵の分布調査を実施中だ。今回発見された地上絵もこの共同研究に活用することによって、地上絵の分布を正確に把握するとともに、その分布規則を明らかにすることを目指しているとした。またこうした研究成果を、地上絵の保護活動に積極的に役立てる予定だとしている。