ピュア・ストレージ・ジャパン(以下、ピュア・ストレージ)は12月9日、東京都内の本社で記者説明会を開催し、代表取締役社長の田中良幸氏が2022年のビジネスを振り返るとともに2023年の展望を語った。
田中氏は説明会に登場すると開口一番、「当社は快進撃を続けている」と述べて笑顔を見せた。グローバル全体で業績が好調だとのことで、2023年度(今年度)の業績は27.5憶ドルを見込んでいるという。対前年成長率は26%だ。
2022年11月6日に終了したQ3(第3四半期)において、売上高は対前年成長率20%増となる6.76憶ドル、営業利益率は3.6%増の15.9%だ。これらの成長の要因となったのはサブスクリプションサービスで、ARR(年間経常収益)は10.3憶ドルとのことだ。なお、ARRが10憶ドルを超えたのは今回が初だという。
第3四半期のトピックとしては、米Meta(旧Facebook)のAIスーパーコンピュータ「Research SuperCluster」構築の第1フェーズの支援が完了し現在は第2フェーズへと移行していることが紹介された。これも収益増加に貢献しているようだ。製品に関しては、近年発表した「FlashArray//C」「FlashArray//XL」「FlashBlade//S」などの新製品が好調だとしている。
日本国内に目を移して同時期の外付型OEMストレージシステム市場を見ると、前年同期比で22.7%縮小している。そうした中でピュア・ストレージは前年同期比で9.6%の成長を記録した。
田中良幸氏は「2022年も成長できたのは、以前から当社が伝え続けてきたメッセージが市場に認められてきたからだと思う。ESG(Environment:環境、Social:社会、Governance:ガバナンスの頭文字を取ったもの)に本気で取り組む企業の要望に、当社製品は対応できているのだろう。米国本社から日本法人に対する2023年の投資額も増えており、日本市場への期待を感じる。2023年はメインステージに立てるほど飛躍の年にしたい」と展望を述べた。
続いて、ピュア・ストレージのプリンシパル・テクノロジスト岩本知博氏が2023年の展望を語った。
同氏によると、2023年は特にHDDをフラッシュ・ストレージに置き換える動きが強まることが見込まれるようだ。近年はQLC(Quad Level Cell)やDirectFlashなどの技術進歩により、フラッシュ・ストレージの低コスト化や高密度化が進んでいる。
ESGの観点から省電力や省スペースが求められる中で、QLCによりHDD(SAS)と同程度の価格でフラッシュ・ストレージを提供できるようになったことによって、HDDからの移行が今後さらに加速するとのことだ。
また、ピュア・ストレージが以前提供していたPure as-a-Serviceは今年から「Evergreen//ONE」と改称して展開しており、従量課金型のサブスクリプションモデルで提供している。同社は2023年について、特に外部の投資家に依存する企業を中心にサブスクリプションモデルのような柔軟な消費モデルへのITシフトが進むと見ている。投資家らは財務が柔軟な設備投資の負担が小さい企業を好意的に見るようになっており、いつでもどこでも利用できるAnywhere Service Economyが拡大するという。
近年はサプライチェーンの問題が表出しているが、ピュア・ストレージは適切にサービスを届けるためにサプライチェーンマネジメントの強化を明確に打ち出している。製品の型番を少なくするとともに、再利用や転用が可能な標準コンポーネントを用いることで、レジリエンスを強化しているそうだ。同社は2023年も引き続きサプライチェーンの混乱の軽減を図る。
もう一つの注力領域はサイバー攻撃に対するデータ保護だ。ランサムウェア被害が甚大化する中で、同社のストレージ製品に「セーフモード(金庫モード)」を搭載した。ハッカーの手口は単に身代金を目的としたデータのロックから、完全にデータを掌握してIPアドレスを変更してネットワークから切り離す手法に変化している。
同社製品のセーフモードでは、管理者権限を乗っ取られてストレージにログインされた場合でもバックアップデータにはアクセスできないのだという。以前はアレイ単位でしか設定できなかったセーフモードだが、現在は保護するデータと保護しないデータを選別できるようにしたとのことだ。
2023年にはサイバーセキュリティ保険では十分なデータ保護ができなくなるとして、ストレージ製品レベルでのデータ保護を強化する方針だ。