半導体材料市場調査およびアドバイザリー会社である米TECHCETは、2022年の米国半導体業界におけるベーシックウェットケミカル(薬液)の需要が21万トンを超えており、今後の米国での半導体ファブ新増設によって製造能力が増加に伴って、さらに需要が増すこととなるため、2026年までに薬液の供給不足に陥る可能性があるとの予測を発表した。
特に、最近の米国CHIPS法の成立に伴い、米国ファブの拡張や新設、買収への関心は高まりを見せている。こうした動きに併せて関東化学/Chemtrade、ChanChung、Sunlit、MGCなどの化学薬品サプライヤは、施設の新造などを行うことを発表しているが、実際の需要の増加に十分な対応ができるかどうかは不透明だとTECHCETは指摘している。
TECHCET CEOのLita Shon-Roy氏は、「材料サプライヤによる生産能力拡張の発表により、H2SO4(硫酸)およびH2O2(過酸化水素)については国産化が可能である。一方、超高純度HFおよびIPAは、量と価格が完全なプラント投資を正当化できるようになるまで、引き続き日本などからの輸入に頼る可能性がある」と、薬品ごとにばらつきが生じる可能性があることを指摘している。
また、NH4OH(アンモニア) については、2026年までに 現在より45%多い量が必要になるとされており、この需要の増加は、米国現地での生産によってサポートされる可能性があるが、増産のコミットメントはまだ公式に発表されていない。HNO3(硝酸)やH3PO4(リン酸)のような高純度の化学物質の場合、古い工場は何年にもわたって閉鎖されており、新しい設備に代わるものがないため、現地での生産を増やすことが課題となっている。その結果、輸入が増加し始めている。これら2つの化学物質に関連する需要は少量であり、ROIが低いため、厳しい米国の環境規制に関連する課題に直面する可能性のある新しい工場を建設するよりも、海外サプライヤから輸入する可能性が高いともしている。
なお、米国の景気後退のリスクが短期的な需要に影響を与えることが予想されるが、CHIPS法への資金提供と、最先端技術に対応したより多くの半導体デバイスの需要は継続して高まってくことが予想されるため、消費者向け製品の需要は今後10年間、成長曲線をたどり続けると考えられるため、米国における薬液への投資に大きなリスクはないとTECHCETでは見ている。