早稲田大学(早大)は12月7日、2022年から運用が開始されたジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)のデータをもとにした成果として、80億年~100億年前という初期宇宙に、これまで確認されていなかった特異な「赤い渦巻銀河」を発見したことを発表した。
同成果は、早大 理工学術院総合研究所の札本佳伸次席研究員(国立天文台 (NAOJ)アルマプロジェクト特任研究員兼任)、同・理工学術院の井上昭雄教授、同・理工学術院総合研究所の菅原悠馬次席研究員(NAOJ アルマプロジェクト特任研究員兼任)らの研究チームによるもの。詳細は、米天体物理学専門誌「The Astrophysical Journal Letters」に掲載された。
現在の宇宙には、「ハッブル分類」にもあるように、楕円銀河や渦巻銀河など、いくつかのわかりやすい外見のパターンに沿った銀河が多く存在する。中でも、地球が属する天の川銀河を含む渦巻銀河は(天の川銀河はより正確には棒構造のある棒渦巻銀河)、銀河中心に「バルジ」と呼ばれる楕円体の構造を持ち、特徴的な渦巻状の腕「渦状腕」を持つ。
これまでのところ、こうした渦巻構造を持つ銀河がいつ・どのように生まれ、どれほどの過去から存在するのかわかっていない。特に、80億年以上前(宇宙誕生から約60億年が経過した時点)の宇宙については、ハッブル宇宙望遠鏡などによる観測の結果から、不規則な形態を持つ銀河が多いことが知られ、渦巻銀河はほとんど発見されていなかった。このことから、渦状腕など、渦巻銀河の形状が整うためには銀河が生まれてから長い時間が必要で、もっと時代が下った、現在に近い時代の宇宙にしか存在しないのではないかと考えられてきた。
また近年、すばる望遠鏡による大規模探査によって、現在の宇宙にある渦巻銀河の98%は比較的活発な星形成活動を行っていることが明らかにされた一方、星形成活動が止まってしまった"年老いた"渦巻銀河は、2%程度しか存在しないことがわかっている。そのことが現在の宇宙だけの特徴なのか、それとも過去の時代の宇宙にある銀河を見れば現在とは異なる様子が見られるのか、といった問いに対しては、望遠鏡の感度や空間分解能の制限により答えを得ることができていなかったのである。
そこで研究チームは今回、2022年から遂に運用を開始したNASAのJWSTが初公開したデータから、特にこれまでの観測では捉えられていなかった特異な銀河である、赤い渦巻銀河に注目することにしたという。