カナダに本拠を置く半導体情報提供企業のTechInsightsは、独自のリバースエンジニアリング分析の結果、世界で初めて200層を超えるNAND型フラッシュメモリを商品化したのは、2022年7月に232層品の量産開始を発表したMicron Technologyでも、同8月に238層品のアナウンスをしたSK hynixでもなく中国のYMTC(長江存儲科技)であることが判明したと発表した。

TechInsightsは、中国で11月に販売されたHikSemi製2TB NVMe SSD「CC700 SSD」を入手し、搭載されているNANDをX線やダイ写真を用いて分析したところ、YMTC製の232層TLC NANDが使用されていることが確認されたという。YMTCの第4世代技術であるXtaching3.0を採用しているという。

  • YMTC製232層NANDのパッケージ

    YMTC製232層NANDのパッケージ (出所:TechInsights)

  • YMTC製232層NANDの一部分の断面SEM像

    YMTC製232層NANDの一部分の断面SEM像 (出所:TechInsights)

MicronならびにSK hynixに加えSamsung Electronicsも11月には第8世代技術を活用し236層NANDも量産発表を行ったが、TechInsightsによると実際の製品に搭載された200層超えのNANDが確認できたのはYMTCが初めてだったという。

これによりYMTCは先行する世界的な半導体メモリ企業各社を追い越したこと、少なくとも肩を並べたこととなるが、中国武漢に本社を置き、世界的な新型コロナのパンデミック時の都市封鎖に直面するなど、課題に直面することが多かったにも関わらず、こうした世界最高層製品の商品化を成し遂げたことは脅威として考える必要がある。

YMTCは2016年に創業、最初に32層NANDを開発し、2018年には64層品を商品化。ついに今回、232層品の商品化という驚異的な速度で開発と製品化を進めてきている。この延長線上で判断すると、同社は2030年までに競争の激しいフラッシュメモリで先頭グループに位置する可能性がでてくるが、実際にこのペースを同社が維持することはほぼ不可能になってきたとTechInsightsは分析している。

背景には高度な半導体製造装置の購入に対する米国の規制があることに加え、最先端半導体の研究開発費はうなぎのぼりで、YMTCだけで増加し続ける開発コストを賄うだけの十分な利益をまだ生み出せていないためだとTechInsightsでは指摘している。