2022年11月29日、福岡県は「福岡県と九州大学 イノベーションカンファレンス」を東京都千代田区で開催。その中で、特別講演者として、九州大学(九大)発ベンチャー企業ヘリオスの鍵本忠尚 取締役兼代表執行役社長・CEO(最高経営責任者)(図1)が登壇し「細胞医薬品・再生医療などを製品化する事業を精力的に進めている一方で、エネルギー系のベンチャー企業PowerX(東京都港区)に出資し、PowerXの取締役会長として、大型蓄電池事業などを進めている」と解説した。
細胞医薬品・再生医療などの事業化を進めているヘリオスは、2011年2月に創業し(この当時の社名は日本網膜研究所)、2015年6月に東証マザーズに上場するなど、企業を成長させながら、iPS細胞などを活用した再生医薬品の開発・製造の事業を進めている。
鍵本取締役は代表執行役社長・CEO(最高経営責任者)として、「ベンチャー企業による新規事業創出を図るイノベーション育成策として、自然エネルギー活用のカギとなる大型蓄電池事業などを進めているPowerXに出資し、同社の会長に就任済み」だという。
PowerXは「2021年3月に創業したエネルギー問題を解決する事業を進めるベンチャー企業として注目を集めている企業だ」という。注目を集めている理由の1つは「このPowerXを創業した伊藤正裕取締役・代表執行役社長CEOは、17歳の時にヤッパ(現・ZOZOテクノロジーズ)を創業し、Javaベースのソリューションサービスを事業化したベンチャー起業家だからだ。このため、このPowerXの社外取締役には、米国などのベンチャー企業で活躍した人物が就任するなど、優れた人物が取締役などを務めている」という。このため、「同社への出資者(主要株主)には、日本瓦斯、今治造船、日本郵船、森トラスト、みずほキャピタル、伊藤忠商事などの多数の名を連ねており、2022年11月には15億円の出資を集めた」という。
注1:2022年8月には資金調達シリーズAを実施しており50.7億円を調達している
PowerXは、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギー活用のカギは、発電量の増減をカバーする大型蓄電池にあるとみて定置用蓄電池の「PowerX Mega Power」を事業化(図2)、同時に急速充電器「Hypercharger」も開発し、事業化しており、「2022年6月に、岡山県玉野市に日本最大級の蓄電池組立工場『Power Base』を建設すると発表し、その事業を進めている」という。
鍵本氏は「この定置用蓄電池を使用すると、太陽光発電や風力発電などの再生エネルギーの余剰電力を充電でき、夜間などの必要な時に、この蓄えたエネルギーを使用することが可能になり、電力逼迫時には、この余剰電力蓄積分が有効活用できる」と説明し、「エネルギー利用を賢く使える」と解説する。
なお、実は鍵本氏、九大・大学院の医学部の学生時代に、現在の九大総長の石橋達郎教授(図3)の指導を受けた後、米国に留学し、カリフォルニア州シリコンバレーのJETRO事務所でインターンを経験。その後、九大病院で眼科医として勤務した時に、「iPS細胞を利用する再生治療のベンチャー企業創業を考えた時に、恩師の石橋教授が助言などをして支援してくれた」と、当時を振り返って解説している。