文部科学省と米航空宇宙局(NASA)は、国際宇宙ステーション(ISS)の2030年までの運用延長に日本が参加することや、月上空に建設する基地「ゲートウェー」に日本人が滞在することで合意した。日本は2020年代後半に米国人以外で初となる月面着陸を目指しており、国際協力で役割を果たしていく。欧州も続いて延長参加を決めた。

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    オンラインで日米を結び、合意書に署名したNASAのネルソン長官(中央)と永岡文科相(左上の画面内)=日本時間11月18日(NASA、キーガン・バーバー氏提供)

両者は11月18日、日本がゲートウェーのために機器や物資補給機を提供し、NASAが日本人によるゲートウェー滞在の機会を1回提供することを規定した取り決めに、オンラインで署名した。また同省は、国際協力による月探査「アルテミス計画」で必要な技術を実証する場だとして、日本のISS参加延長を表明した。

NASAの資料によると日本のゲートウェーへの貢献は(1)国際居住棟への環境制御・生命維持システム、熱制御機能、カメラの提供、(2)国際居住棟や小型居住棟、燃料補給棟へのバッテリーの提供、(3)物資補給機「HTV-XG」の2030年までの実現――からなる。

同日会見した永岡桂子文科相は「将来の有人活動を担う若者に挑戦の機会を示せて、大変うれしい。日本人月面着陸に向け、取り組みを推進していきたい」と述べた。

ハリス米副大統領は合意を受け「日本の貢献は科学の知識を前進させ、勇敢な飛行士が宇宙の先へと探検することを守るものだ。日本人が月面を歩く日も近づいた」とコメント。NASAのビル・ネルソン長官は「今回の合意はバイデン政権が約束を履行することを意味する。これにより日米は、より高給の雇用、多くの研究開発能力、共に競争するための能力向上を生み出すだろう」とした。

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    日本が運用延長に参加するISS(NASA提供)

ISSは地球の上空400キロを周回する有人基地で、日米欧露とカナダが参加している。1998年に建設を開始。2000年から各国の飛行士が交代で常時滞在し、科学実験などを行っている。日本は滞在中の若田光一飛行士を含め7人の飛行士が11回の長期滞在を経験しているほか、物資補給機「こうのとり」や実験棟「きぼう」の開発、運用を行ってきた。運用延長はこれが3回目で、昨年末に米国が方針を示し各国に参加継続を呼びかけている。もともとISSは2030年頃に設計上の寿命を迎えるとされてきた。日本に続き、欧州宇宙機関(ESA)も11月23日に延長参加を決めた。

米国はISSに続く大規模国際宇宙探査として、アルテミス計画を主導。2025年には、1972年のアポロ17号以来となる有人月面着陸を目指す。2020年代にゲートウェーの建設を進めて実験や観測を行うとともに、30年代の有人火星着陸に向け技術実証を進める。ただ、25年の有人月面着陸を困難とする見方もある。日本は19年に参加を決定した。

日本の有人宇宙開発をめぐっては、今回の日米合意直後の11月25日、宇宙生活を模擬する地上施設で2016~17年に行った精神ストレスの研究で、実験データの捏造(ねつぞう)や改ざんなどの問題が多数あったことをJAXAが発表している。成果の学術発表には至らなかったものの、信頼回復が課題ともなっている。

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    ゲートウェー(右)と有人宇宙船の想像図(NASA、アルベルト・ベルトリン氏提供)

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