Lattice Semiconductorは米国時間の12月5日、オンサイトおよびオンラインの形で同社の新しいミッドレンジFPGAシリーズである「Lattice Avant Platform」を発表した。この発表会の様子を簡単にご紹介したい。
Latticeは2019年11月に、Samsungの28nm FD-SOIプロセスを利用したNexus Platformを発表、以後継続して半年に1製品の割合でプラットフォームを拡充、今年6月には5番目の製品であるMachXO5-NXを発表している。このNexus Platformの拡充は同社の売り上げを大きく伸ばす事に繋がっている(Photo01)訳だが、今回発表されたAvant Platformは、Nexus Platformとは別というか、より上位に位置する製品群となる(Photo02)。
具体的に言えば、Nexus Platformは最大でも100K、殆どの製品が50K以下のLogic Cellだったのに対し、Avant Platformは最大500KのLogic Cellとより広帯域なメモリとI/O、それとより強力なComputation Powerを持つPlatformという訳だ。もちろん、このミッドレンジFPGAのマーケットにはXilinx/AMDのKintexとかAltera/IntelのArriaという競合製品が存在する訳だが、消費電力は2.5倍低く、性能は2倍、パッケージサイズは1/6としている(Photo03)。
このAvantによって同社のSAMは現在の2倍に広がる、というのがCEOであるJim Anderson氏のメッセージである(Photo04)。
ちなみにNexusとAvantで内部構造が同じなのかどうか(=Bitstreamの互換性があるか)は現状不明(LUTは4ビット入力1ビット出力で同じ)だが、同社がNexus用に提供してきたSoftware SolutionはそのままAvantでも利用できるとしている(Photo05)。
さてもう少し内部構造を。Avantは最大500KのLogic Cellを搭載する構成(Photo06)だが、これに加えてProtocol LogicなどをハードIPの形で持つことで省電力化に貢献する(Photo07)。
SerDesは25Gで、PCIe Gen4 x8にも対応可能であり、専用のコントローラも搭載される(Photo08)。またこれとは別にDDR5のI/Fも搭載する(Photo09)。
演算エレメントとしてはFPGAのLUTにOn-Chip MemoryとDSPが組み合わされるが、このDSPが“tuned for AI inferenec”という点が特徴である。詳細は明かされなかったが、Convolutionの演算対応とか、FP8とかInt 1/2/4などのデータ型への対応なども施されているのかもしれない。また耐量子暗号に対応したセキュリティエンジンも搭載される(Photo11)。
なお発表会では性能のデモとして、ビデオ映像から車のClassificationを行った例が流された(Photo12,13)。
ところで先ほど競合に比べて消費電力が少ないと説明された(Photo14)が、会場では実際にArria V GZとKintex-7、それにAvant-Eを並べた上で消費電力を示し、その省電力性をアピールした(Photo15,16)。
またSerial I/Fが競合製品より高速(Photo17)として、実際にデモも行われた(Photo18)。
これは恐らくちょっと説明が必要である。例えばArria V GZの場合、トランシーバそのものの最高速は12.5Gbpsである。同様にKintex-7も、搭載されているのは12.5GbpsのGTXトランシーバである。なので25Gbpsのトランシーバを搭載したAvant-Eは2倍高速という話な訳だが、Kintex Ultrascale+とかArria 10ではなくやや古い世代の製品と比較しているあたりは、同社の説明では、最大500K LC(ロジックセル)クラスの製品と比較したためだとしている。最後がパッケージ寸法で、これはまぁ見ての通りである(Photo19)。
同社は今後、NexusとAvantの2つをシリーズ展開してゆく事を改めて表明した(Photo20)他、2023年後半には同社としては初のDeveloper Conferenceを開催する事も明らかにした(Photo21)。
ちなみにそのAvant Platformの最初の製品が「Avant-E」(Eはエッジの頭文字)であるが、最大500K Logic Cellと36MB Embedded Memoryを実装。初期化はI/Oだけなら10ms、Full Configurationでも60msで完了とされる。商用グレードと産業用グレードの両製品が用意されるとの事で、すでに一部製品は出荷開始済みだという。