日本ヒューレット・パッカードはこのほど、都内で年次イベント「HPE Discover More 東京 2022」を開催した。本稿では日本ヒューレット・パッカード 代表執行役員社長の望月弘一氏と、米ヒューレット・パッカード エンタープライズ ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)&AI エグゼクティブバイスプレジデント兼ジェネラルマネージャーのジャスティン・ホタード氏による基調講演を紹介する。
“妥協ゼロの変革”を目指すHPE
まず、登壇した望月氏は「今回のイベントのテーマは“妥協ゼロの変革~エッジからクラウドまで全てをつなぐ~”です。IT環境は複雑化し、分散化しており、こうした環境を有機的に結合させることがDX(デジタルトランスフォーメーション)の成功にとっては不可欠なのです」と強調した。
同氏は「また、昨今では多くの企業が改めてデータの価値に焦点を当てています。まさに分散したデータを、いかにつなぎ合わせて多くの洞察を導くのか、つまりデータファーストモダナイゼーションが重要になっています」との認識だ。
そのため、同社ではデータファーストモダナイゼーションを可能にするためのプラットフォームを提供するとともに、持続可能なソリューションを提供しているという。
望月氏は「当社はEdge to Cloud Platformとしてエッジ、データセンター、コロケーション問わず、すべてのオンプレミス環境をクラウドとして提供することが戦略です」と力を込めた。
続いて、ホタード氏が登壇し「新型コロナウイルスの感染拡大により数年で世界は大きく変化し、仕事の進め方も根本的に変わりました。変化の中で生き抜くためには、集合的なレジリエンス(弾性)、適応力、イノベーションが試されています。HPEの経営理念は『人々の生活と働き方の向上』です。これを達成するためには、パートナーやお客さまとイノベーションを起こし、共創する必要があり、強化していく必要があります」と語った。
ホタード氏は同社の経営理念に基づいた活動として、オーストラリアのPawsey Supercomputing Centreと共同で、AIを活用することで景観に影響を及ぼさないゼロエミッションの海洋波力発電の最大化に取り組んでいる事例を挙げた。
また、シンガポールのFathom XとはAIを活用してマンモグラフィの読影を10倍以上高速化し、30分から最短2分に短縮しているという。そして、スウェーデンのZenseactと毎秒1万回以上の安全性シミュレーションが可能な次世代の自動運転ソフトウェア開発などの事例を示した。
こうした、企業・組織との共創をふまえて、ホタード氏は「当社はパートナーやお客さまが目的を果たすために尽力しています。データは次世代の運用モデルのためになくてはならないものであり、お客さまのエクスペリエンス(体験)や意思決定を加速し、将来を見据えた対応ができます。成功するためにはデータの価値を利用する必要があります」と述べた。
パブリッククラウドは問題の一部しか解決しない
HPEのユーザーは、複数世代にわたるIT環境の刷新、数PB(ペタバイト)規模のデータの有効活用、ワークロードやデータを自由に展開したいと考えているという。
ユーザーの声を鑑みて、同氏は「データの価値を実現するためにはデータファーストモダナイゼーションが必要であり、ハイブリッドクラウドが必要になります。また、クラウドエクスペリエンスが次世代の運用モデルには必須です。パブリッククラウドのアプリケーションやデータにはアジリティはあるものの、ハイブリッドの世界では問題の一部しか解決しません」と強調する。
ホタード氏はIDCの調査を引き合いに出し、エッジやデータセンターをはじめアプリケーションとデータの約7割はパブリッククラウドの外側にあり、データの主権やコンプライアンスはローカル性を必要としているという。
同氏は「こうした環境では、クラウドエクスペリエンスを実現できていません。これにより、体験のバラつきや統一性のなさを助長しています。データサイロで断片化された運用モデルの中で競争に勝つために必要なスピードとアジリティをビジネスにもたらすとともに、あらゆる場所にクラウドエクスペリエンスを提供する必要があります」と話す。
そのため、企業・組織ではハイブリッドクラウド戦略を実行し、DXを実現しなければならないという。クラウドを任意の場所に展開する必要があり、どのアプリケーションをクラウドに移行するか、またはオンプレミスに残すかということが問題ではなく、すべてのワークロードやデータにまたがるクラウドエクスペリエンスを考えることが先決だと指摘する。
「HPE GreenLake」の利点
その点、同社のEdge to Cloudプラットフォームの「HPE GreenLake」は任意の場所に展開できるクラウドであり、エッジ、データセンター、コロケーションでもクラウドライクなセルフサービス、従量課金を実現しており、必要に応じてスケールアップ/ダウンを可能とし、マネージメントも可能としている。
ホタード氏は「GreenLakeは、ビジネスクリティカルなアプリケーションやデータをパブリッククラウドの外側でモダナイズすることが可能です。柔軟性を持ちながらクラウドをどこにでも実装でき、ハイブリッドクラウドによりデータファーストモダナイゼーションを加速させ、クラウドエクスペリエンスをどこでも実現できます」と胸を張る。
サービスをスピーディにデリバリーすることを可能としており、アジャイルの開発パイプラインを通じて、よりスピーディにサービスを展開し、運用を見える化するとともに、コストのコントロール、透明性を担保して使用量の把握もできるという。
また、データを利用してAIや機械学習や分析のための基盤をデータが存在するところに大規模にオンプレミスのまま構築でき、リソースと利用されていない資本を解放し、循環型経済を実現することを可能としている。
最後にホタード氏は「GreenLakeはデータファーストモダナイゼーションを実現するために必要なものを備えています。そして、マーケットプレイス、エコシステムも拡充しています」と締めくくった。