大阪公立大学(大阪公大)は12月1日、睡眠時(閉眼時)における光環境を適切に把握するため、閉眼時のまぶたの光透過率を測定した結果、閉眼時に感じる照明の明るさは、これまで考えられていたよりも大幅に高いことを明らかにしたと発表した。
同成果は、大阪公大大学院 生活科学研究科 居住環境学分野の酒井英樹教授によるもの。詳細は、色の応用に関する全般を扱う学術誌「Color Research and Application」に掲載された。
睡眠不足や睡眠障害は、健康上の問題や生活への支障を生じさせることは明白だ。そのため、それらの解消を目的として、睡眠に影響を与えるさまざまな要因を解明するための研究が進められており、その1つとして光環境がある。
睡眠に対する光の影響は大きく、日中や入眠時、睡眠中に暴露する光が、生活リズムや睡眠の質に影響を与えることはすでに明らかにされている。その際、光環境を表すために使われる照度や色温度といった指標は、開眼時の明所視における視覚特性に基づいて設定される。しかし、睡眠中は眼を閉じているため、まぶたを透過することで網膜に届く光の状態は、照度や色温度で表されるものとは大きく異なっていることが考えられる。そのため、睡眠中(閉眼時)の光環境を適切に把握するためには、まぶたの光透過率や閉眼時の明るさの感じ方を知る必要があるという。
大阪公大によると、これまでの研究でもまぶたの光透過率を測定したものはあるが、極端に低照度だったり、片眼だけの評価だったりと、日常生活における照明環境とは大きく異なるものだったとする。そこで研究チームは今回、照度100lxと比較的明るく、顔全体(両眼)が照らされている条件で実験を行ったという。
今回の実験にはのべ33名が参加。両眼の開閉に応じて照度を増減させる照明装置を用いて、開眼時と閉眼時の明るさ感が一致する条件から、閉眼時の光透過率を測定するという方法が用いられた。光源には、赤色、黄色、緑色、青色の単色LEDと白色LEDが使用された。
その結果、過去に測定されたまぶたの光透過率(0.3%~14.5%)から予測されるよりも、数倍から10倍程度の明るさを感じていることが明らかになったという。また、照明の色による違いも大きく、赤色光は明るく感じるのに対し、青色光は暗く感じることも判明。さらに個人差も大きく、眼を閉じてもほとんど明るさ感が変わらない人がいることもわかったとする。
閉眼時の光環境を適切に把握できるようになったことで、入眠時の照明、昼寝や深夜交通に適した照明など、さまざまな状況における睡眠に適した照明の研究が進むことが期待されるという。たとえば、透過率の低い色の光は眼を閉じた人だけ暗く感じることから、災害避難所など、起きている人と寝ている人が同居する空間の照明に活用できるとした。
ただし、大きな個人差が生じた原因は、今回の研究ではわからなかったとする。主要因として心理効果が考えられるとするが、原因の探求とともに、睡眠不足や睡眠障害との関連についての調査もしていく予定とした。