パナソニック 空質空調社と、ヤンマーのグループ会社であるヤンマーエネルギーシステム(ヤンマーES)は12月1日、分散型エネルギー事業の開発および販売で協業していくことを発表した。

分散型エネルギーシステムは、消費地の近くで発電することで、送電ロスや廃熱を低減しようというもの。今回の協業では、ヤンマーESの「マイクロコージェネレーションシステム」で発電する際に発生する廃熱を、パナソニックの業務用空調機「吸収式冷凍機」を用いて空調に活用することを基本とする。

吸収式冷凍機は水を冷媒として用いる空調機で、一般的には天然ガス(直火)式が主流だが、今後、CO2の排出抑制などのニーズの高まりに向け、パナソニックでは従来、大規模事業者や地域冷暖房向けであった廃熱利用型の中規模事業者への普及促進を図るうえで、重要となるのがコージェネレーションシステムとの連携と判断。5kWや25kWといったマイクロコージェネレーションシステムで強みをもつヤンマーと協業することが最適と判断。パナソニックからの働きかけで、協業が実現したとする。

  • 2種類に分けられる吸収式冷凍機

    2種類に分けられる吸収式冷凍機 (資料提供:パナソニック/ヤンマー)

  • コージェネレーションシステムと吸収式冷凍機の連携イメージ

    コージェネレーションシステムと吸収式冷凍機の連携イメージ (資料提供:パナソニック/ヤンマー)

パナソニックの副社長執行役員 空質空調者 社長である道浦正治氏は、「ヤンマーと協力して1%のエネルギーも無駄にしない社会の実現を目指す」と意気込みを語った。

  • 記念撮影

    左からパナソニック 空質空調社 空調冷熱ソリューションズ事業部 業務用空調ビジネスユニット ビジネスユニット長の小松原宏氏、パナソニック 空質空調社 社長の道浦正治氏、ヤンマーホールディングス 代表取締役COOの山本哲也氏、ヤンマーエネルギーシステム 代表取締役社長の山下宏治氏

コージェネと吸収式冷凍機の連携で総合効率を向上

具体的な協業の取り組みとしては、コージェネで発電した際に出される廃熱を吸収式冷凍機に送り、その熱を使って冷媒である水を循環させようというもの。コンセプトは「エネルギーを作る、無駄なく使う」で、その実現のために、ヤンマー側からコージェネの発電状態に応じて、どのような廃熱状態となるのかといったデータをパナソニック側が受け取り、その熱状態に応じて、最適な吸収式冷凍機の稼働を可能とする専用コントローラが開発されたという。

  • 専用コントローラ
  • 専用コントローラ
  • コージェネレーションシステムと吸収式冷凍機の最適連携を実現する専用コントローラを開発 (資料提供:パナソニック/ヤンマー)

その結果、導入効果の試算では、7500m2/100床程度の病院を想定。連携システムを導入した場合と、導入しない場合で比較した場合、導入しない場合の熱利用率0%に対し、導入した場合は熱利用率が100%となることから、CO2排出量は29%削減、エネルギーコストも37%削減できることが示されたとする。

また、C02削減ニーズの高まりを受け、実際にどうやってさらなる削減につなげていくのかを利用者が直観的にわかりやすく理解できることを目的としたサイネージの開発も進めているという。それにより、システム導入前と比べ、電力やガスの削減量、廃熱回収量、C02排出削減量などがどの程度であるかを、簡単に示すことができるようになり、中規模事業者のさらなるC02削減活動に貢献できるようになるとしている。

  • サイネージ表示のイメージ例

    サイネージ表示のイメージ例 (資料提供:パナソニック/ヤンマー)

このほか、パナソニックでは群馬県大泉町の群馬工場(旧 三洋電機 東京製作所)にヤンマーのマイクロコージェネレーションシステムを設置。12月より本格的な実証実験を開始したとする。主に、導入効果試算結果の確認であったり、今後の製品展開に向けたデータ収集などが進められる予定で、この実証試験を継続していき、より連携のブラッシュアップを図っていきたいとしている。

なお、両社はこのコージェネレーションシステム+吸収式冷凍機の排熱利活用システムの需要規模を10年累計で2000億と試算。中規模施設の事業者を中心に、両社で販売を行っていくことで、10年累計で1200億円規模の事業に育てたいとしている。協業によって提供されるシステムの提案は2023年1月より開始される予定で、専用コントローラの受注は2023年4月より、同7月から出荷開始予定で、既設のユーザーのほか、設備入れ替えユーザーなどに積極的に提案していきたいとしている。