野村総合研究所(NRI)は11月29日、国内企業におけるIT活用の実態を把握するためのアンケート調査の結果を発表した。
同調査は同社が2022年9月に、郵送で調査協力依頼を送付しWebで回答を回収して実施したものであり、調査対象は日本国内に本社を持つ売上高上位企業約3000社のCIOまたはIT担当役員、経営企画担当役員、IT部門長、経営企画部門長またはそれに準じる役職者。有効回答企業数は466社。
2022年度の自社のIT投資が前年度に比べて増加したと回答した企業は52.9%で、2021年度の調査と比べて7.7ポイント増加した。一方、減少したと回答した企業は6.1%に留まり、IT投資は増加傾向にある。
2023年度のIT投資については、2022年度よりも増加すると予測した企業が49.0%に上り、50.5%が増加を予測した2021年度における調査に近い結果となった。
デジタル化の推進による効果がどのような側面で得られているかを複数回答で尋ねると、「業務プロセスの改善、生産性向上」が81.5%、「業務に関わる人数や労働時間の削減」が77.4%だった。
一方、「顧客数や顧客単価、顧客満足度などの向上」は35.0%、「既存事業における商品・サービスの高度化」は34.4%、「新規事業や新サービスの創出」は28.8%、「SDGs、地域活性化などの社会課題解決への貢献」は17.1%に留まっている。
デジタル化の推進から効果を得る上で各社が直面している課題を複数回答で聞くと、「デジタル化を担う人材の不足」が80.5%に上る一方で、課題を解消するために行っている取り組みとして、「人材のスキル向上や専門人材の採用」を挙げた企業は48.2%に過ぎない。
人材の不足は課題として大きく認識されているものの、解消のための具体的な取り組みはまだ途上にあると同社は見る。ただしデジタル戦略については、その立案と実行に取り組んでいる企業の割合(43.9%)が、課題だと回答した企業の割合を上回っており、取り組みの進展によって課題の解消が進んでいるという。
デジタル化の取り組みを3つの領域に分けて取り組み年数を尋ねたところ、「業務プロセスのデジタル化」では5年以上の取り組みを行っている企業の割合が39.3%だったのに対して、「顧客に対する活動のデジタル化」は16.3%、「デジタル化による事業やビジネスモデルの変革」は10.7%に過ぎない。
一方、取り組んでいないとの回答の比率を見ると、「顧客に対する活動のデジタル化」では31.3%、「デジタル化による事業やビジネスモデルの変革」では36.2%に上る。
3つの領域のそれぞれで取り組んでいる企業に、投資から財務上の成果や他の定量的な成果を得ているかを質問すると、「財務上の成果(コストの削減、収益の増加など)が得られている」 または 「他の定量的な成果(顧客獲得数、顧客満足度など)は得られている」と回答した企業の割合は、顧客に対する活動のデジタル化では、取り組み期間が3年以上5年未満の企業で56.7%、5年以上の企業で69.2%だった。
同様に、財務上の成果または他の定量的な成果が得られているという企業の割合は、業務プロセスのデジタル化では、取り組み期間が3年以上5年未満の企業で63.0%、5年以上の企業で82.7%に上る。また、デジタル化による事業やビジネスモデルの変革では、取り組み期間が3年以上5年未満の企業で40.0%、取り組み期間が5年以上の企業で65.7%だった。
どの領域でも、取り組みの期間が長いほど 「財務上の成果(コストの削減、収益の増加など)が得られている」という企業の割合が高い傾向が見られる。
同社は、デジタル化への投資を意味のある成果につなげるためには、中長期の視点を持って取り組みを進める必要があると指摘しており、特に、事業やビジネスモデルの変革については腰を据えた取り組みが求められると提言している。