日本ヒューレット・パッカード(HPE)は11月25日、都内で開催した「HPE Discover More 東京 2022」においてデータセンターなどへの設置を想定、企業向けに筐体を小型化したスーパーコンピュータ(スパコン)「HPE Cray EX2500」に加え、「HPE Apollo」シリーズの後継となる「同 XD2000」「同 XD6500」を発表した。
エクサスケールには創意工夫が必要
冒頭、日本ヒューレット・パッカード 執行役員 HPC・DATA & AI ソリューション事業統括本部長兼データサービス事業統括本部長の根岸史季氏は「エクサスケールを超えるような時代に突入した。これまでは、ムーアの法則でもたらされて性能が向上してきたが、物理的な限界も含めて鈍化した。ムーアの法則だけに頼ることはできず、エクサスケールを突破するためには冷却とネットワークに対する創意工夫が必要だ」との認識を示す。
今月に米国キサス州ダラスにて開催されたHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)に関する国際会議「SC22」で発表された、世界のスパコンに関するランキングの2022年11月版(第60回)「TOP500」において、米ORNL(米オークリッジ国立研究所)とHPEのエクサスパコン「Frontier」(性能は1.102ExaFlops)がトップとなっている。
HPE Cray EX2500は、同EX4000スーパーコンピューターと同じアーキテクチャとなり、データセンターに収まるように24%小型化。エネルギー効率の向上を実現する100%直接水冷方式を採用し、CO2排出量の削減に加え、費用対効果が期待できるスケーラブルなパフォーマンスだという。
第4世代インテル Xeon Scalableプロセッサと、第4世代AMD EPYCプロセッサを搭載した機種を揃え、Xeon Scalableプロセッサ搭載機は223年第1四半期、EPYCプロセッサ搭載機は同第2四半期にそれぞれ提供を開始。
「HPE Apollo」シリーズの後継機
一方、HPE Cray XD2000とXD6500は同社の「HPE Apollo 2000 Gen10 System」と「同 6500 Gen10 System」の後継機。両機ともに高密度な専用サーバとなり、モデリング、シミュレーション、AIなどのワークロードに適している。
ワークロードのニーズに応じて、CPU、アクセラレーター、ストレージ、インターコネクト、電源および冷却オプションにわたるテクノロジーをカスタマイズできる柔軟性と幅広いオプションを提供するという。
XD2000は、EPYCプロセッサ搭載の空冷式が12月5日、Xeon Scalableプロセッサ搭載機は2023年第二四半期にそれぞれ受注を開始し、GPUのAMD Instinct MI210アクセラレーター搭載機は同第1四半期から提供を開始する。
また、XD6500はXeon Scalableプロセッサ搭載機、NVIDIA H100 Tensor Core GPUを搭載した機種はともに2023年第1四半期に受注開始を予定。
いずれの製品もAIや機械学習など高負荷なコンピュート集約型、データ集約型のワークロードといったエクサスケールクラスのシステムをサポートするため、イーサネットインターコネクトの「HPE Slingshot」、データ保存とアクセスを容易つ効率的に行う「Cray ClusterStor E1000」、コードのポータビリティを可能にするコンパイラと開発者ツールを統合した「HPE Cray Programming Environment」、電力消費量の大きいデバイスの熱を効率的に除去する「Direct Liquid Cooling」などの技術を搭載している。
米ヒューレット・パッカード エンタープライズ ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)&AI エグゼクティブバイスプレジデント兼ジェネラルマネージャーのジャスティン・ホタード氏は「これまでのHPCはモデリングやシミュレーションなどに長けていたが、現在ではAI、ハイパフォーマンスデータ分析が中核になってきており、エクサスケール時代のトレンドになっている。これらを別々に走らせるのではなく、結集させたいと顧客は考えている」と指摘。
そして、同氏は「モデリングとシミュレーションをAIに融合させることが起きており、将来的にスーパーコンピュータは量子の世界まで到達するだろう。エクサスケールのスーパーコンピューティングのユニークな点は、解像度が高く、多くのデータを詳細・忠実に投入することで、より正確にモデリングが可能となり、大規模なデータセットを走らせることができる。これにより、正確なシナリオを導き出すことが可能だ。ただ、すべての組織が運用面などでスーパーコンピュータを持つことはできないことから、扱いやすく、結果を出す時間の短縮が図れるように取り組んでいる」と述べていた。
なお、ユースケースとしては政府機関や製造業、金融サービス、商用AI、エネルギー、気象情報サービス、医療・生命科学、運輸、小売などを想定している。