天地人は11月25日、衛星データを活用し、気候変動の第2の要因であるメタン(CH4)の水田からの排出量を推定する独自手法を開発したことを発表した。

メタンは、気候変動の主な人為的要因であるCO2と比べ、濃度が低く残留期間も短いが、1分子あたりの温暖効果は高いことが知られている。気候変動の人為的要因の約30%を占めるとされており、中でも水田から排出されるメタンは全体の約12%に上るとされている。

そうした中、2021年に開催された国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)の「グローバル・メタン・プレッジ」では、メタンの排出量を2030年までに30%削減する目標が宣言された。また、2022年11月に開催されたCOP27では、米バイデン政権が最新の「米国メタン排出削減行動計画」を公表している。

このように、CO2に加えてメタンの排出削減もグローバルな目標となったことから、同社は水田からのメタン排出量を推定する手法を開発することにしたという。そして、光学衛星画像や合成開口レーダー(SAR)衛星画像などの気候に関する衛星データ、AI分析、そして水田農業の専門性を組み合わせることで、推定手法を開発することに成功したとする。同手法は、メタン排出に大きく関わる「水管理の履歴」を把握することに優れているとしている。

また同社では、同手法の事業化に向け、国内外問わず、幅広くビジネスパートナーの募集をスタート。対象地域によって事業内容は異なるが、ビジネスパートナーと共同で同手法を国内外で実施し、対象地域の環境・社会・経済、およびグローバル・メタン・プレッジに貢献したいと考えているとした。同手法を応用した事業例は以下の3点などが考えられている。

  1. 大規模稲作経営者などが削減する(した)水田メタンをビジネスパートナーと共同で計測・モニタリングし、ESGスコアなどを向上するのに活用可能なデータおよびサービスを提供
  2. 小規模稲作農家などが削減する(した)水田メタンをビジネスパートナーと共同で計測・モニタリングし、カーボンクレジットの発行を支援するためのデータおよびサービスを提供
  3. 国内に限らず、米の生産量・輸出量が多い国(インド、中国、バングラディシュ、インドネシア、タイ、ベトナム、ミャンマー、フィリピン、カンボジア、ネパールなど)での事業展開

なお同社では、上述の3点の事業例に限らず、さまざまな事業で応用できるよう同手法の改善を進めていくとしている。

  • メタンの温室効果

    1分子で見れば、メタンはCO2以上の温室効果がある。気候変動の人為的要因の約30%を占めるとされ、そのうちの約12%が水田から排出されていると見積もられている (出所:天地人 Webサイト)