日立製作所は11月28日、鉄道設備の輸送障害発生時において、指令員による早期の障害原因の特定や復旧方法の指示を可能とするAI支援システムを開発したと発表した。東日本旅客鉄道(JR東日本)とともに現場実証を経て、実用化に成功した。
同システムは、日立が独自開発した膨大な過去の記録から類似事象を判定し抽出するリコメンドAI技術を活用。JR東日本が蓄積する障害対応の記録から類似事象を判定して、原因の絞り込みや復旧方法の提案といった対応内容などを、現場の後方支援や指示を司る指令員向けに自動で提示し、判断を支援する。
具体的には、障害発生時、発生したエラー内容や現場で行った確認事項を指令員が入力すると、日立独自のリコメンドAI技術により、過去の障害対応に関する記録から類似度の高い事象を判定してダッシュボードとして一覧化し、過去の類似事象の原因や対策をグラフィカルに分かりやすく提示する。
人の経験や知識からは類似性に気付くことが困難な発生頻度の低い稀な事象についても、発生事象の稀さ(レア度)を加味した類似度判定により、類似事象を抽出・提示することができるという。
JR東日本と日立は、2020年3月から共同で同システムの実証実験(PoC)を実施している。今回、その有効性を確認できたことから2023年4月より山手線などの首都圏在来線にて本番運用を開始する。PoCでは、従来、復旧に約2時間を要した事象に対して、1時間程度に短縮ができる結果を得るなど、50%程度の復旧時間の短縮を確認したとのことだ。
日立は今後も、AIをはじめデジタル技術を活用した輸送障害の早期復旧、日本の安全・安定輸送の実現に向け、取り組みを推進していく考え。また、日立のIoT基盤「Lumada(ルマーダ)」で展開している各種ソリューション・技術を活用し、指令員が活用する情報と環境の変化に応じて、さまざまな早期復旧に役立つツールや各種システムと連携を図っていくとのことだ。