ロームは、マツダおよび今仙電機製作所と、e-Axleを含む電動車の電動駆動ユニットに搭載されるインバータおよびSiCパワーモジュールの共同開発契約を締結したことを発表した。

e-Axleは、モーター、減速機、インバータを一体化させた「EVの心臓部」で、電動車の走行性能や電力変換効率を左右する重要なユニットであり、中でも駆動の中核を担うインバータの高効率化に向けて、SiC MOSFETに大きな期待が寄せられている。

ロームは、マツダを中心とした「電動駆動ユニットの開発・生産に向けた協業体制」に参画し、今仙電機などパートナー企業との共創によってe-Axle全体を見据えたインバータの共同開発を行うという。また、その性能向上を支える先進的なSiCパワーモジュールを開発・供給することによって、他にはない小型・高効率な電動ユニットの創出に貢献するとしている。

  • マツダとロームの記念撮影

    左がマツダ 取締役 専務執行役員 研究開発・コスト革新・イノベーション統括の廣瀬一郎氏、右がローム 取締役 専務執行役員 COOの東克己氏

ロームが進めるSiC技術開発

ロームは、2010年にSiC MOSFETの量産を開始して以来、2012年にフルSiCパワーモジュール、2015年にトレンチ構造採用SiC MOSFET(第3世代)を、それぞれ量産するなど、常に業界をリードするSiCデバイスの技術開発を進めてきた。

2020年に開発を完了した最新のSiC MOSFET(第4世代)は、短絡耐量時間を改善し、業界トップクラスの低オン抵抗を実現したデバイスであり、車載インバータ搭載時には、IGBT比で6%の電費を改善(国際規格「WLTC燃費試験」で算出時)できるなど、電動車の航続距離延伸などに貢献するという。現在ベアチップに加えて、ディスクリートパッケージでの製品を展開しているが、今回の共創では、この最新SiC MOSFET(第4世代)を搭載したパワーモジュールを開発し、提供する予定である。

  • ロームが開発した第4世代SiC MOSFETとIGBTの比較

    ロームが開発した第4世代SiC MOSFETとIGBTの比較 (出所:ローム)

ロームは、日本の他の大手パワーデバイスメーカーとは異なり、社内に新幹線や電車や発電所設備などのパワー半導体の社内顧客である強電部門を持たぬため、制約なくマーケティングができ、最近は、国内のみならず欧州メーカーからの商談の機会も増え、東芝買収案に3000億円出資するなど、パワー半導体業界再編に向け積極経営に乗り出している。