2022年11月1日から2023年2月19日まで、東京・上野公園の国立科学博物館にて特別展「毒」が開催されている。その名の通り、毒をメインテーマに据えた同展示では、動植物をはじめ、菌類・鉱物・人工毒など、地球上に存在するあらゆる毒にまつわる約250点の資料が展示されている。
特別展の開始に際し、10月31日に国立科学博物館にてオープニングトーク&プレス内覧会が開催され、オープニングトークには、同特別展のオフィシャルサポーターを務める伊沢拓司氏と、監修統括の細矢剛氏が登壇した。
「毒」とは……?
「毒」という単語に触れたとき、あなたはどのようなイメージを浮かべるだろうか。
ヘビやフグなどの毒を持つ動物を連想する人がいれば、毒草や毒キノコのような植物・菌類を思い浮かべる人もいるだろう。あるいは、人間が作り出した人工毒を想像した人もいるかもしれない。そしてそれらに共通するのは、「ヒトを含む生物に害を与えるもの」という点ではないだろうか。
しかし、数ある毒の中には薬効を持つものがあり、逆に人体に有用でありながら過剰に摂取すると毒になるものもある。さらに、アレルギー反応のように受容する側の感受性によって毒性が異なる場合もある。
今回の特別展では、このように多様な性質を持つ毒を「生物に何らかの作用を与える物質」とし、動物・植物・菌類・鉱物・人工物などあらゆるところに存在する毒について、さまざまな視点から徹底的に掘り下げたとのこと。展示の監修には、動物学や植物学に加え地学・人類学・理工学の各分野においてスペシャリストともいえる研究者が携わり、国立科学博物館ならではの視点で解説するとしている。
あらゆる角度から毒に迫る全5章の展示
特別展は、「毒の世界へようこそ」「毒の博物館」「毒と進化」「毒と人間」「毒とはうまくつきあおう」の全5章で構成され、拡大模型や剥製などの標本、あるいは実物が約250点展示されている。
メインともいえる「毒の博物館」は、毒性を持つ動植物などの標本が展示されたコーナー。植物の展示では、昔から人々に恐れられてきた毒草だけではなく、日常で慣れ親しむ野菜が毒性を持っている例などを紹介。また動物については、フグやヤマカガシが体外から毒を獲得し蓄える仕組み、ハチに刺された痛みを定量化したシュミット指数など、毒にまつわる興味深い展示が並ぶ。
続く毒キノコを中心とした菌類の展示では、毒性を持たない種と、見た目がよく似た毒性を持つキノコを見比べることができる。
そのほかにも、公害問題などで耳にする有毒な鉱物や、人類が生み出しほかの生物にとって毒となっているマイクロプラスチックなど、多角的な目線で「毒」について考える展示となっている。
そして、「毒と進化」や「毒と人間」に関する展示では、自然界を生き抜くために毒性や毒への耐性を手に入れた生物や、人間による毒の研究の道のり、毒の活用などを学ぶことができる。
伊沢氏「毒を正しく知って正しく恐れることが大切」
特別展の開始を前に行われたオープニングトークでは、監修統括の細矢氏とオフィシャルサポーターの伊沢氏が、「毒」展開催のきっかけや見どころについて語った。
細矢氏は、毒をテーマに据えたきっかけとして「実は、毒というのは学問のあらゆる領域に何かしら関わっていて、そんな毒をキーワードにした展示をすることで、国立科学博物館らしい横断的な展示になるのではないかと考えた」とする。
一方の伊沢氏は、「小さいころから、怖いイメージがありながらも刺激的でどこか魅力的な存在」だという毒をテーマにした展示について、「世代を問わずさまざまな面から学ぶことができると思う」と話す。加えて、「毒というものは、正しく知って正しく恐れることが大切。さまざまな面から毒について触れるこの展示を通して、毒とうまく付き合っていくための知識などを学んでほしい」とメッセージを送った。