宇宙航空研究開発機構(JAXA)は11月22日、月へのセミハードランディングを目指し、11月16日に「スペース・ローンチ・システム(SLS)」で打ち上げられた超小型探査機「OMOTENASHI」について、月着陸に必要な月着陸マヌーバ(DV2)運用の実施ができないと判断したことを明らかにした。

OMOTENASHIは、ロケットから分離後、通信が途絶。想定外の速さで回転しており、太陽光パネルによる発電ができていないトラブルが発生していた。機体の姿勢を変える制御などを行ったが、バッテリの電圧が低下。機体の回転軸方向を変更するコマンドを送信したものの、送信機が電圧低下の影響でオフとなり、それ以降、探査機からの電波は受信できない状況がこれまで続いていた。

短時間であっても太陽光パネルが太陽方向に向けば、若干であってもバッテリへの充電が行われるため、月へ向かうためのDV2の実施予定日時の最終時刻となる11月22日の夜半過ぎまで通信の確立に挑んだが、22日2時(日本時間)までに通信が確立できなかったことから、DV2の運用が実施できないと判断したとJAXAでは説明している。

  • ミッションシーケンスのイメージ

    OMOTENASHIの月面着陸ミッションシーケンスのイメージ (C)JAXA

ただし、OMOTENASHIは月面着陸のほか、地球磁気圏外での放射線環境判定というミッションが用意されており、JAXAでは月面着陸以外の技術実証を目指し、引き続き、復旧作業を進めていくとしている。

なお、それと並行してJAXA宇宙科学研究所宇宙科学プログラムディレクタをチーム長とした対策チーム(OMOTENASHI運用異常対策チーム)を22日付で設置、すでに第1回の会合を開催しており、原因の究明ならびに今後の対応、超小型衛星開発分野に資する知見などの取りまとめを行っていく予定だとしている。