京都産業大学(京産大)は11月18日、銀河系外天体の赤外線観測において世界最高クラスの解像度を達成し、それにより、大質量が降着中の大質量ブラックホールが、噴出しているジェットに垂直な明るいリング構造に取り囲まれていることを確認したと発表した。

同成果は、京産大の岸本真教授を中心とする国際共同研究チームによるもの。詳細は、米天文学専門誌「The Astronomical Jounal」に掲載された。

宇宙に存在する大多数の銀河の中心部には、太陽質量の数百万倍から数十億倍程度の大質量ブラックホールが存在すると考えられている。こうした大質量ブラックホールにガスやダストなどが降着する(落ち込む)際には、中心部に強い紫外光を発する円盤状の構造(降着円盤とも呼ばれる)が形成され、これが大質量ブラックホール系の「エンジン」部になるとされる。

この中心部からは高エネルギーのプラズマジェットが噴射されている場合もあり、こうした円盤とジェットが周辺部と激しい相互作用を起こす源となる。現在のところ、この円盤構造自体は視直径が小さすぎるため、その形状を直接捉えることができていなかった。

しかし、この中心部の円盤構造が実際に存在するのであれば、このさらに外側に、ダストからの放射で明るく光るリング状の構造が存在すると予測されていたという。ブラックホール系の中心部では温度が高すぎてダストは溶けてしまうが、中心部から十分に離れた1200℃程度以下の領域であれば溶けずに存在でき、中心部からの紫外光に熱せられて、リング状に強い赤外線を放っていると考えられている。

このリング状に光るダストを実際に検出できれば、中心部の円盤構造の存在を確認することになり、「エンジン」部および周囲との相互作用の理解を大きく前進させることができるという。

ダストリングは、横方向から見ようとすると、ダストは自身を構成する粒子によって光が吸収されてしまうため、なかなか形を捉えることができない。そこで研究チームは今回、地球との位置関係から、リング全体を見られる上(もしくは下)から見ることができ、かつ最も明るい質量降着のある大質量ブラックホールが存在する銀河をターゲットとして絞ることにしたという。その結果、りょうけん座の方向、6200万光年の位置にある渦巻銀河「NGC4151」が選ばれることとなった。

  • NGC4151銀河の全景(直径数万光年)

    NGC4151銀河の全景(直径数万光年) (出所:京産大Webサイト)