2023年2月に開催される予定の半導体回路関連会議の最高峰に位置する「国際固体素子回路会議(ISSCC 2023)」における採択国・地域別の論文数で、中国が米国を上回り、70年のISSCC史上初めて首位となったことが明らかとなった。

採択件数はアジアから30件増、北米から30件減

ISSCC極東委員会は11月17日、オンライン会見を行い、論文応募・採択状況の説明を行った。それによると、応募件数629件中、採択は198件で採択率は31%で例年と変わらなかったが、北米、欧州、極東(アジア)別の採択件数は、アジアが前年比30件増となった一方、北米からの発表が同30件減となったとする。また、大学からの発表が、全体の75%を占め、2011年の50%から徐々に割合が増加しており、回路やシステム研究では大学の役割が増してきている様子がうかがえる。

  • ISSCC 2023における地域別採択論文数の推移

    ISSCC 2023における地域別採択論文数の推移 (出所:ISSCC極東委員会)

採択件数で中国が北米を抜いて初のトップに

採択された論文の国・地域別内訳を見ると、中国本土(香港・マカオ含む)の大学や企業による論文数は59件で70年のISSCCの歴史の中で初めてトップとなった(2022年は29件で、米国、韓国に次いで3位)。

  • ISSCC 2023における地域・国別採択件数の推移

    ISSCC 2023における地域・国別採択件数の推移 (出所:ISSCC極東委員会)

中国の採択論文を所属機関別に見ると、マカオ大学15件、清華大学13件、北京大学6件と、大学主導で米国勢に負けない先端の半導体回路やシステムの研究が行われていることがうかがえる。記者会見にて、「中国の採択論文数が増加し、米国の論文採択数が減少した要因に米中貿易摩擦が関連しているか」との質問が出たが、ISSCC極東委員会は「現在のところ、そのような情報は米国を含めた国際委員会の会合で確認されていない。中国の投稿論文数は大きく変わっていないが、中国の採択率が向上してきており、論文の質が高まっていることが分かっている。米国からの採択件数が減ったのは、応募件数減少の影響だろう」と答えており、中国からの論文の質がこのところ毎年向上している点が注目される。ISSCCはじめ半導体国際会議でいずれは中国が米国と首位争いをする状況が生まれると予想されてはいたが、こんなに早く中国勢が首位に躍り出るとは驚きである。

日本の採択件数は10件、最多は東工大の4件

前回まで長年にわたり首位を独走してきた米国の採択論文数は40件で2位に後退した。3位は韓国、4位は台湾、日本はオランダと同率の5位だった。日本は、2016年までの採択件数は20件台であったが、2020年以降は10件前後で推移しており、米国や中韓台の国々に比べて存在感が薄れてきているのは残念と言わざるを得ない。

この日本から採択された10件の内訳は、東京工業大学(東京工業大学)が4件(ワイヤレス分野2件、デジタルプロセッサ1件、RF1件)でトップ、次いでソニーセミコンダクタソリューションズ(イメージャー2件)と大阪大学(テクノロジーディレクション分野2件)、それ以外がルネサス エレクトロニクス(デジタルプロセッサ)と半導体エネルギー研究所(エッジAI)となっている。

今後、日本では、レガシープロセス(28nm)から最先端プロセス(2nmあるいはBeyond 2nm)にいたるまで、複数のファウンドリが2024年から2027年にかけて多額の補助金支給により稼働を始める予定なので、それに見合う集積回路設計技術の進展および設計技術者の育成が期待される。