モルフォは11月16日、東京大学(東大)、東北大学、神戸大学が推進する、深層学習による超新星爆発シェルの膨張予測を用いた高解像度銀河形成シミュレーションの高速化プロジェクトに対し、スーパーコンピュータ(スパコン)「富岳」における深層学習を用いた同シミュレーションの推論高速化の支援を目的として、同社のディープラーニング推論エンジン「SoftNeuro」を提供したことを発表した。
「SoftNeuro」は、主要なディープラーニング・フレームワークに対応し、さまざまなエッジデバイス環境で高速処理を実現するディープラーニング推論エンジンで、汎用的な推論エンジンであるため、画像認識だけでなく音声認識やテキスト解析などにも利用可能という特徴を持つ。
同社は今回のプロジェクトにあたり、3Dシミュレーションでの「SoftNeuro」利用に向けた独自開発を通じ、「富岳」上での3D CNN推論高速化(Conv3DのSVE最適化および3D Winogradの適用)を実現。プロジェクトとの連携を通じ、富岳における深層学習を用いた3Dシミュレーション(銀河形成シミュレーション)のさらなる高速化を支援していくとしている。
今回の高解像度銀河形成シミュレーションの高速化プロジェクトは、将来の映像を予測する「Memory-In-MemoryNetwork」(Wang et al. 2018)をもとに、3D-CNN(3D畳み込みネットワーク)ベースの深層学習モデルとして独自に開発された。「SoftNeuro」は、超新星爆発の非等方なシェル膨張の予測・タイムスケールの短い粒子の同定に適用されている。
プロジェクトの成果に関する論文である「深層学習による超新星シェル膨張予測を用いた高解像度銀河形成シミュレーションの高速化」の筆頭著者である東大 理学系研究科 天文学専攻の平島敬也大学院生は、今回の「SoftNeuro」の提供を受けて、「我々が開発した3D-CNNベースの深層学習モデルは、銀河形成シミュレーション内の流体計算の一部を予測し、ボトルネック解消をサポートします。これまで、深層学習による推論は実際のシミュレーションで使用できるような速度ではありませんでしたが、SoftNeuroによりモデルが高速化されたことで、銀河形成シミュレーション中で実用可能となりました」とコメント。
またモルフォCTO室の松尾恒シニアリサーチャーは、「これまでモルフォはスマートデバイス向けSoC上での最適化を手がけることが多かったのですが、今回、富岳上にて行った「SoftNeuro」の3D-CNN高速化を通じて新しい領域に挑戦することができました。この度のプロジェクトで培った経験を活かし、今後は三次元計算の最適化やスーパーコンピュータでの最適化などに技術を活用していけるのではと期待しています」と述べている。
現在、深層学習を用いた3Dシミュレーションの高速化・効率化へのニーズが高まっており、同社は今後、「SoftNeuro」のさらなる利便性・技術力向上を図り、さまざまなサービスやソリューションへの提供を通じ、グローバルレベルでの技術の発展と豊かな文化の実現に貢献していくとしている。