ディー・エヌ・エーは11月17日、子会社のアルムと帝人が脳血管内治療計画プログラムと電子タグシステムRFID(Radio Frequency Identification)を活用した医療サプライチェーンの実証試験を開始したことを発表した。2024年12月までに実証試験を完了し、2025年ごろまでに社会実装することを目指す。
今回の実証試験では脳血管内治療を主なターゲットとしており、アルムはAI(Artificial Intelligence:人工知能)を用いたICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)技術により、各患者に最適な治療計画と治療デバイスを提案するプログラムを構築する。一方の帝人は独自のRFID技術を用いて、治療デバイスの過剰や欠品を防止する在庫管理体制を整備してこのシステムの実効性を確認するという。
脳血管内治療においては、脳梗塞や脳動脈瘤などの疾患に対して大腿部や肘の血管などからカテーテルを挿入し、ステントやコイルなどのデバイスを留置する必要がある。これらのステントやコイルなどは高額であり、患者の血管サイズや瘤の形状によって使い分けが必要なためバリエーションが豊富だ。
ところが、これらの治療デバイスは緊急で使用されることが多く、医療者がサイズや種類などの細かい情報を事前に指定してメーカーに発注することが困難であるため、現在はメーカーが全てのサイズや種類のデバイスを都度、病院へ貸し出している。そのため、使用されなかったデバイスが滅菌切れとなって廃棄されるケースが多発しており、その廃棄コストは年間数億円にも上るとされる。
そこで今回の実証試験では、プログラムで提案された治療計画に基づいて治療で用いる可能性のあるデバイスの情報を事前に関係者へ共有することで、適切なデバイスを適切な量で流通させる次世代医療サプライチェーンの構築を目指す。
帝人が展開するRFIDシステム「Recoシリーズ」を使用することで、物流倉庫や病院内での正確な在庫管理を実現し、流通在庫を絞りながらも必要器具の欠品リスクや器具選別による時間コスト、さらにはヒューマンエラーも見込めるとのことだ。