Micron Technologyは11月16日、マイクロンメモリ ジャパン広島工場にて、同社のサンジェイ・メロートラ社長 兼 CEOをはじめ、ラーム・エマニュエル駐日米国大使、湯﨑英彦 広島県知事や経済産業省 商務情報政策局の野原諭 局長など、日米の政府当局者なども複数参加した1β DRAM量産開始セレモニーを開催した。
競合他社に先駆け、11月1日より広島工場にて本格的に量産出荷を開始したMicronの1β DRAMプロセスは13nmクラスと呼ばれ、広島工場にて3年の月日をかけて開発され、そのまま同工場で量産適用されたものとなる。前世代の1α DRAMプロセスは、本社のある米国アイダホ州ボイジーにて開発され、台湾の量産工場にて生産されており、日本で研究開発から製造まで一貫適用された1β DRAMとはいささか趣が異なっている(広島工場は1βのほか、1Z、1Y、1X、20nm、25nm DRAMの生産も行っている)。
元々、エルピーダメモリの広島工場であったが、2013年にMicronが買収。以降、これまでに130億ドル規模の投資を行ってきており、先端DRAMの研究開発および先行試作拠点のセンター・オブ・エクセレンスとして位置付けられてきた。同社では、同工場について、「開発と生産の両方が行われているため、開発から製品を出荷するまでをスピーディーに行え、リーディングエッジの価値ある製品をいち早く市場に届ける役割を担う存在」と、その位置づけを説明する。
こうしたセンター・オブ・エクセレンスとしての役割を担う背景には、同社のテクノロジーの優位性と量産の卓越性を成し遂げるのは人であり、人を重視するという価値観の企業文化があるという。マイクロンメモリ ジャパンでは、イノベーションを生み出すためには多様化が重要という観点から、DEI(ダイバシティ、イクォリティ、インクルージョン)としてさまざまな活動を推進。2022年5月には新たにDEOの社内活性化を目指し、専任担当者も採用したとする。こうした活動の結果、例えば採用した従業員のうち、女性が占める割合は2017年では10.0%程度であったのが、2019年には31.8%に、そして2022年には43.6%まで拡大したとするほか、外国人社員の割合も募集総数の30%以上を占めるまでに広がりを見せているという。また、社内外の教育プログラムの充実を進め、例えば前工程を担当する広島工場では、FETA(Front End Technical Academy:前工程に関する技術アカデミー)の教育プロセスを経ることで、入社後、段階的に実力を挙げていき、一線級の半導体プロセスエンジニアになれるインフラを整備したという。
量産が開始された1β DRAMの第1弾はLPDDR5Xで、同社の第2世代High-K/メタルゲート(HKMG)技術とArF液浸マルチパターニング技術を活用することで、16Gビットで、データ転送速度が8.5Gbps、消費電力は1α世代比で15%減、メモリ密度は同35%以上の高集積化と、高性能化を果たしたほか、EDECの新仕様で、最大3,200Mbpsまでサポートする周波数ティアである動的電圧・周波数スケーリング拡張コア(eDVFSC)を実装することで、従来より高効率な電源制御が可能になったという。
同社では、次世代DRAMとして1γ DRAMプロセスを予定しているが、EUVを導入するかどうかについては、明確には答えていない。その先が1Δ DRAMプロセスとなるのか、それとも1桁プロセス世代にジャンプアップするのかについても、「すべてはコストとの兼ね合い」だとしている。
なお、1β DRAMプロセスは2023年以降順次、DDR5やHBM、GDDRなど、各種産業分野に向けたDRAMが生産されていく予定で、同社としては2~3年ほどをかけてプロセスの成熟を進めていくとしている。
また、広島県はマイクロンの他にも半導体工場があるなどの関係から、半導体産業の育成にも注力しており、「せとうち半導体共創コンソーシアム」として、広く産官学の連携を打ち出している。マイクロンメモリ ジャパンとしても、同コンソーシアムに参画予定で、広島大学の寺本教授を中心に、主に半導体人材の育成を中心にサポートをしていくとの考えを示している。