スーパーコンピューターの計算速度の世界ランキング「TOP500」が日本時間15日、米テキサス州ダラスで開かれた国際会議で発表され、米オークリッジ国立研究所の「フロンティア」が前回5月に続きトップとなった。同機は前回、史上初めて毎秒100京回(京は1兆の1万倍)を意味する「エクサ級」を達成した。理化学研究所の「富岳(ふがく)」は2位を守った。
TOP500は性能評価用プログラムの処理速度を年2回競うもの。最新版では米エネルギー省がクレイ社などと開発したフロンティアが毎秒110京2000兆回。これに富岳の44京2010兆回が続いた。3位も前回と同じで、欧州高性能計算共同事業体がフィンランドに設置した「ルミ」だが、システムを拡大して速度を倍増し30京9100兆回とした。
上位500台の内訳は中国が最多の162台。これに米国127台、ドイツ34台、日本31台、フランス24台が続いた。TOP500への申請がないものの、中国が既に複数のエクサ級スパコンを開発済みとの情報もある。
日本は先代「京(けい)」が2011年に連覇した後、中国や米国に抜かれた。2020年6月、富岳で8年半ぶりに首位となり、昨年11月まで4連覇した。
TOP500と同時に発表された、産業利用に適した計算の速度を競う「HPCG」と、グラフ解析の性能を競う「Graph(グラフ)500」で、富岳は6期連続の1位を達成。人工知能(AI)の深層学習に用いられる演算の指標「HPL-AI」では3位となった。
富岳は理研と富士通が共同開発。理研計算科学研究センター(神戸市)の京の跡地に設置され、2020年4月からの試験利用を経て昨年3月に本格稼働した。文部科学省「成果創出加速プログラム」のほか、一般公募や国の重要課題での利用などが進んでいる。
理研は今後、従来型のスパコンと、物質を構成する原子や電子などの「量子」の性質を利用した未来の「量子コンピューター」とを組み合わせる研究開発を強化するという。8月には文科省からの受託により、富岳の後継機実現に向け、求められる性能や機能の調査研究に着手した。
松岡聡センター長は「富岳は世界トップ級の総合的な実力を示した。SDGs(国連の持続可能な開発目標)や(超スマート社会の)Society(ソサエティー)5.0を実現し、さまざまな問題を解決するため、幅広い高性能を容易に実現できる。設計思想は正しかった。経験を活かし、次世代の高性能計算に向けた研究開発を目指す」とコメントした。
TOP500のランキング上位は次の通り(名称、設置組織、国、毎秒の計算速度)。
1位 フロンティア オークリッジ国立研究所(米国)110京2000兆回
2位 富岳 理研計算科学研究センター(日本)44京2010兆回
3位 ルミ 欧州高性能計算共同事業体(フィンランド)30京9100兆回
4位 レオナルド 欧州高性能計算共同事業体(イタリア)17京4700兆回
5位 サミット オークリッジ国立研究所(米国)14京8600兆回
※以下、日本勢上位
22位 ABCI2.0 産業技術総合研究所 2京2210兆回
23位 ウィステリア・ビーデック01(オデッセイ) 東京大学 2京2120兆回
39位 トキ・ソラ 宇宙航空研究開発機構 1京6590兆回
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