ワインの名産地というと、フランスやカリフォルニア、チリなど海外のイメージが強いかもしれないが、最近では日本ワインも世界的に高く評価されている。
ご存じの通り、ワインはブドウを原料として作られる。では、高品質なワインはどのように作られるのだろうか。今回は、静岡大学とヤマハ発動機による高品質なワイン作りに貢献するAIの研究開発について紹介したい。
AI技術で小さなブドウの花を高精度にカウント
品質の高いワインを作るためには、品質の高いブドウを育てることが大切である。ブドウは実を多くつけすぎると品質が落ちる可能性があり、高品質なブドウを収穫するためには、実をつける前の段階で余分な花を取り除く作業が不可欠となっている。
また、高品質なブドウをどれだけ収穫できるかを生育の早い段階で見積もるためには、開花の段階で、どれだけ花が咲いているか把握することが重要である。しかし、ブドウの花は小さいため、数を正確に把握することは容易ではない。
そこで静岡大学とヤマハ発動機は、高精細カメラを搭載した小型移動車両を用いて、夜間に撮影した画像からブドウの花の数を高精度にカウントするAI技術を開発した。
今回開発された技術では、撮影された画像から花を含む領域を特定し、そこから個々の花を検出するという2ステップでの処理が行われる。
また、画像にさまざまな加工を加えてデータ量を増やし精度を向上させる技術を推論時にも適用させることで、夜間に撮影された薄暗い画像やぼやけた画像でも高精度な検出を実現した。
同技術の開発によって、メルロー、ソーヴィニヨン・ブラン、ジンファンデルといった異なる品種でも、既存技術では75%程度だったカウンティング性能を90%まで向上させることができたという。
この技術は、ブドウの花以外にも、複雑な背景下で多数の小さな部位を高精度にカウントする用途に応用できる。開発チームは今後、ノウハウの効率的な継承やAIとの協働による負担軽減、持続可能な地域社会の実現のため、この技術の実用化を目指すとした。
なお、今回発表された研究成果は『Computers and Electronics in Agriculture』に掲載されている。
高品質なワインを作るためにAIが活躍するとは驚きだったのではないだろうか。今後の実用化が楽しみだ。