そもそも開発環境構築とは
開発環境構築とは、開発に必要なソフトウェアなどをインストールし、自分のコンピュータでソースコードの実行や実行結果の確認などを行えるようにすることです。システム開発を行う場合、まずは自分専用の開発環境を構築しなくてはいけません。
たとえばPythonでWebアプリ開発を行う場合、Pythonの実行に必要なソフトやソースコードを記述するためのソフト、実行結果を確認するためのWebブラウザなどを準備する必要があります。
また、単にソフトをインストールするだけでなく、問題なく動作できるよう設定ファイルを変更するなどの作業が必要な場合もあります。
Python開発環境の3つの構築方法
Pythonの開発環境を構築する場合、3つの方法があります。3つの方法のメリット・デメリットや難易度について詳しく解説します。
公式のインストーラを使う
1つ目はPython公式のインストーラを使う方法です。インストーラは公式サイトから簡単にダウンロードできるうえに、インストーラの指示に従って作業すれば良いため、他の方法よりも簡単に開発環境を構築することが可能です。
特に初心者の場合開発環境構築に手間取ることが多く、文法を学習する段階に入る前に挫折してしまうこともあるため、なるべく簡単な方法を取ると良いでしょう。また、Python単体なのでパソコンの容量をそこまで消費しないこともメリットです。
【参考】:Python
ターミナル経由で行う
Macではターミナル経由でPythonをインストールすることが可能です。具体的にはpyenvというコマンドを使ってインストールを行っていきます。コマンド入力に慣れている方ならこの方法がもっとも素早く開発環境を構築できます。
しかし、コマンド入力に慣れていない方やWindowsユーザーの方は、公式のインストーラを利用することをおすすめします。
Anacondaを使う
Anacondaというパッケージを使って開発環境を構築することも可能です。AnacondaにはPython本体とPythonライブラリがひとまとめになっており、Anacondaをインストールするだけで機械学習やデータ分析に必要な環境を整えることができます。
しかし、Anacondaは稼働させるのにパソコンのスペックを多く消費します。また、初心者の場合、機械学習ライブラリなどをインストールしても使うことは少ないため、ある程度慣れた方向けの環境構築方法と言えるでしょう。
Python公式サイトからのインストール手順
ここではPythonの公式サイトからインストールする手順について解説します。実際にインストールしながらお読みいただけると幸いです。
公式サイトからインストーラをダウンロードする
まず、公式サイトからPythonのインストーラをダウンロードします。インストーラとはコンピュータにソフトウェアをインストールするためのツールのことで、基本的にインストーラの指示に従うことでインストールを完了させることが可能です。
Pythonの公式サイトへアクセスし、トップページの「Download」タブからインストーラのダウンロードができます。「Python 3.12.5」と書かれた(※2024年9月執筆時点)灰色のダウンロードボタンをクリックするとダウンロードが自動で始まります。ダウンロードは数秒で完了します。
【参考】:Python
インストーラを開く
ダウンロードが完了したらインストーラを開きます。パソコンの下部に表示されるファイル名をダブルクリックすることで、インストーラを開くことが可能です。「Install Python 3.12.5」というインストール画面(※2024年9月執筆時点)が表示されればダウンロードは成功しています。
インストールを行う
ここからはインストーラの指示に従ってインストールを行っていきます。まず、インストール画面の「Add python.exe to PATH」にチェックを入れましょう。その後、「Install Now」をクリックしてインストールを始めます。
インストーラではPythonの細かい設定変更を行うこともできますが、基本的にはデフォルトのままで問題ありません。途中でデバイス変更に関する許可を求められたら、「はい」をクリックします。
インストールには約1分程度かかります。「Setup was successful」と出れば完了ですので、「close」をクリックします。
コマンドプロンプトを開く
続いて、Pythonが正常にインストールされているか確認を行います。Windowsならコマンドプロンプト、Macならターミナルを開いてください。Windows11の場合、スタートメニューを開いて検索バーに「cmd」と入力することでコマンドプロンプトを選択できます。
インストールされているか確認する
コマンドプロンプトに対して「python --version」というPythonのバーションを確認するコマンドを入力します。入力してEnterをクリックした後、Pythonのバージョンが表示されれば正常にインストールされています。インストールが確認できたらインストーラは削除しても問題ありません。
Anacondaのインストール手順
続いて、Anacondaのインストール手順を解説します。Anacondaを使うことでPythonだけでなく、機械学習ライブラリなどもまとめてインストールすることが可能です。
公式サイトからインストーラをダウンロードする
まず、公式サイトからAnacondaのインストーラをダウンロードします。Anacondaの公式サイトから製品ページにアクセスすると、Eメールの登録フォームが表示されます。登録すると関連製品の情報などを受け取れますが、登録しなくてもダウンロードは可能です。
Eメール登録をスキップする場合はフォーム下部の「Skip registration」をクリックします。すると、次の画面で「Download」というボタンが表示されます。クリックするとダウンロードが始まりますが、Anacondaは容量が大きいためダウンロードに時間がかかる場合もあります。
【参考】:Download Anaconda Distribution|Anaconda
インストーラを開く
ダウンロードが完了したら、インストーラを開きます。パソコン下部のファイル名をダブルクリックして、インストーラを開きます。「Welcome to Anaconda」という画面が表示されればダウンロードは成功しています。
インストールを行う
インストーラの指示に従いインストールを行っています。ライセンスの同意を求められるため、文章を読んでから「I Agree」を選択してください。Anacondaのインストール場所を設定する画面も途中で表示されますが、こちらはデフォルトのままでも問題はありません。
最後に「Install」を選択するとインストールが開始します。Anacondaのインストールには5分程度かかる場合が多いです。インストールが完了すると「Completed」が表示されます。再びインストーラの指示に従って作業を行い、最後に「finish」をクリックして画面を閉じます。
Anacondaを起動する
最後に、Anacondaを起動します。Windowsの場合スタートメニューから「Anaconda」と入力することで、Anacondaを選択することが可能です。Anacondaを正常に起動できればインストールは成功しています。
Pythonの開発環境を整える際におすすめのIDE4選
最後に、Pythonの開発環境を整える際におすすめの統合開発環境(IDE)をまとめました。IDEとは、開発に必要なエディター、コンパイラ、デバッガーといった機能をまとめた環境のことです。
パソコンに最初から備わっているメモ帳などでも開発は可能ですが、IDEにはPython開発に必要な機能が多く備わっており、利用することで日々の開発が捗るようになるので、導入をおすすめします。
Visual Studio
Visual StudioはMicrosoft社が提供する人気の高いIDEの1つで、Pythonでの開発に必要な機能が多く揃っています。1つの画面だけで開発を進めることができるため、開発効率を上げやすいのがメリットです。また、拡張機能も豊富であり、自分で使いやすいようにカスタマイズすることができます。
利用者も多いためネット上に情報も多く、分からないことを調べやすいため初心者にもおすすめです。
【参考】:Visual Studio
Visual Studio Code
Visual Studio Code(略称:VSCode)はMicrosoft社が提供しているIDEです。Windows・Mac・LinuxとOSを問わず使える点や、多言語に対応している点が強味と言えるでしょう。また、Git連携機能やデバッグ機能が標準で備わっているので、機能面も優れています。動作も比較的軽く、使いやすいIDEの1つです。
【参考】:Visual Studio Code
Atom
AtomはGitHubが開発したIDEで、機能がシンプルなので初心者でも使いやすいです。タブ型であるのが特徴で、1つの画面で多くのファイルなどを開くことができる点がメリットです。また、拡張性も高くプラグインが豊富なため、上級者からも支持が厚いです。
【参考】:Atom
jupyter
jupyterは非営利団体Project Jupyterが提供する、特に大規模開発に適したIDEです。jupyterは数行のソースコードごとに実行結果を確認できるため、効率的に開発を進めることができます。
1つの画面にソースコードと実行結果を並べて表示できるため、エラーの解決も素早く行うことが可能です。エラー解決に時間を有する初心者にもありがたい機能と言えるでしょう。
【参考】:jupyter
PyCharm
PyCharmは、JetBrains社が提供しているPython専用のIDEです。VSCode同様、OSを問わず利用することができます。Python向けのIDEの中でもシェア率が高いと言われており、初心者にもおすすめです。
無料版と有料版があり、有料版ではチームでの開発に適した機能が備わっているほか、HTML、CSS、JavaScriptなどを用いるWeb開発向けの機能も搭載されています。
【参考】:PyCharm
Eclipse
EclipseはJavaやPHPなどでの開発に使われていますが、PythonのIDEとしても利用可能です。Python以外の言語も扱いたい人には、魅力的なIDEでしょう。
OSを問わず無料で利用でき、日本でも多く使われているので日本語情報が豊富です。デバッグ機能も充実しているので、初心者にとっても利便性が高いです。
【参考】:Eclipse Downloads | The Eclipse Foundation
PyScripter
PyScripterはWindows用のオープンソースのIDEです。PyCharmやVisual Studioなどと比べてシンプルな仕様であることが特徴で、軽量で使いやすいIDEとなっています。
Pythonに特化しており、初心者でも直感的に使いやすいデザインです。大規模で複雑なプロジェクトには向いていませんが、初心者や小規模プロジェクトにはおすすめです。
【参考】:PyScripter|GitHub
Pythonは開発環境の構築が簡単にできる言語
本記事ではPythonの開発環境構築方法について解説しました。Pythonは他言語と比べても開発環境構築を簡単に行うことができます。おおよそ5分程度で開発環境を構築することが可能です。
開発環境構築を行った後は学習サイトや参考書などを使ってPythonの文法を覚えていきましょう。Pythonは人工知能開発などにも使われる需要の高い言語なので、Pythonに興味のある方は、まずは基礎から習得することをおすすめします。