2022年11月8日から13日まで東京ビッグサイトにて開催されている「JIMTOF2022(第31回日本国際工作機械見本市)」で、ダイキン工業は、油圧機器の作動油の状態をカラーセンサによって定量的に計測し、最適な交換時期を通知する機能を搭載した「エコリッチR」を紹介している。
油圧装置内の油の劣化点検を自動化
機械の操業に不可欠な油圧装置の油については、主に目視による点検が行われており、熟練者の感覚によって油の劣化度合いを定性的に判断し、交換時期などが決定されている。だが、大規模な工場になるほど業務時間の増大が課題となっている上、感覚による判断を基準としているため、交換時期の前後による交換コストの増大や機械の故障リスク、業務の属人化など多くの懸念があるという。
これを受けダイキン工業は、油の劣化により変化する「色」を基準として劣化度合いを診断するシステムの開発を開始。2018年4月には、色の認識を行うカラーセンサを提供するオムロンと協業し、油圧装置内の油の劣化度合いを定量的に計測して最適な交換時期を通知する予知保全システムの構築を目指して実証実験を行ってきた。
以来約4年にわたり研究開発を進め、ダイキン工業のハイブリッド油圧システム「エコリッチR」による油交換時期の通知機能を実現したとのことだ。
ブースでは油の異常検知を実演
今回のブースでは、劣化度合いが異なる油や水が混入した油のサンプル、油面が低下したサンプルにカラーセンサをかざすことで、それぞれの状態を即座に診断し、異常を検知した場合にはアラートを表示する様子の実演展示が行われている。色の変化は数値で定量的に評価され、特定のしきい値を超えた際には交換時期を通知するという。また、油圧装置の故障リスクが高まる水の混入や油面低下についても、瞬時に診断するとのことだ。
実際の製品では、機器内に取り付けられたカラーセンサで色の計測を随時行うとのことで、それらのデータを管理システムで蓄積できるという。これにより、油の交換時期を適切に通知するだけでなく、油が劣化するスピードや傾向についても把握することができる点もメリットだという。
ダイキン工業のブース担当者によると、現場にとって大きな負担である油圧装置の点検については、業務効率化に対するニーズは大きいという。「故障による操業停止を避けるための予知保全に関する潜在的なニーズは大きい。それに対して我々は、明確なアプリケーションの形で提案していきたい」とのことだ。
「買ってすぐ役立つサービス」として今年度の上市を目指す
ブース担当者は、製品のコンセプトとして「買ってすぐ役立つサービス」を挙げる。
「油の成分を分析して異常を察知するシステムも油圧装置の点検には有効だが、どの成分を劣化の指標にするかを油の性質ごとに精査する必要があり、装置の導入からすぐに利用を開始するのは難しい。それに比べて、従来から基準として利用されていた油の色の測定を自動化することで、既存の流れの中でIoT化を実現することができるため、スムーズに価値を提供することができる」と語った。
油劣化の予知保全機能を搭載したエコリッチRについて、同技術の開発担当者は「2023年3月までの上市を目指している」としている。また今後の展開として、さまざまな種類が存在する油圧装置の油について、点検可能な範囲を広げるとともに、さまざまな機能を追加して「さらに製品の価値を高めていきたい」と話す。加えて将来的には、色によって計測するシステムを、油圧装置の点検に限らずさまざまな領域に展開することを目指すとしている。