IBMは11月9日(米国時間)、IBM Quantum Summit 2022を開催し、量子コンピュータを中心としたスーパーコンピューティングに対する同社のビジョンに関する概説を実施し、その中で433量子ビットの新型プロセッサ「Osprey」などを発表した。
Ospreyは、これまでに発表された同社の量子プロセッサの中で最大の量子ビット数を持ち、2021年発表の127量子ビットの「Eagle」の3倍以上の量子ビットを実現した。
また、今回は、量子コンピュータを中心としたスーパーコンピューティングの構成要素である「Quantum System Two」も発表された。これは単なるスタンドアロンの量子システムではなく、拡張が可能なため、コントロールラックを追加することで、最大4158量子ビットまで対応できるというもの。モジュール化できるように設計されており、2つのQuantum System Twoと冷凍機間をケーブルで接続し、量子プロセッサを接続することで最大8316量子ビット、3つなら最大1万6632量子ビットを実現できるという。データセンター環境では、既存のラックやAIラックと交換することで、システムの計算能力をさらに拡張できるという。初の稼働システムは、2023年後半に開催されるQuantum Summitにて公開される予定としている。
この2つのほかに同社は、量子ソフトウェア「Qiskit Runtime」のベータ・アップデートのリリースも発表している。量子コンピュータはノイズに弱いため、その対処が重要となるが、APIの簡単なオプションで、ユーザーが速度とエラー数の削減をトレードオフできるようにしたとしており、これらの機能の複雑さをソフトウェア層に抽象化することで、ユーザーが量子コンピューティングをワークフローに組み込むことを容易にし、量子アプリケーションの開発を加速させることができるようになったとしている。
このほか、同社は量子コンピュータの開発ロードマップとして、2026年までの計画を公表している。2023年には、Ospreyの2.5倍以上の量子ビット数となる1121量子ビットの量子プロセッサ「Condor」を発表する予定で、それ以降も、2024年に「Flamingo」(1386以上の量子ビット)、2025年に「Kookaburra」(4158以上の量子ビット)、2026年に量子プロセッサ名は未公開だが、古典通信と量子通信で1万~10万量子ビットに拡張させるとしている。
また、Qiskit Runtimeに関しても2023年にマルチスレッドプリミティブ、2024~25年に誤り抑制と軽減、2026年に誤り訂正の要素を導入するとしている。