内閣府 規制改革推進室は11月11日、第2回スタートアップ・イノベーション ワーキンググループを実施した。主な議題は、弁護士法72条におけるAI契約書レビューサービスの適法性だ。
法務省は2022年6月6日に、政府のグレーゾーン解消制度の中で「AIによる契約書等審査サービスの提供」について「弁護士法第72条本文に違反すると評価される可能性があると考えられる」と示していた。
また、10月にも同様に「契約書レビューサービスの提供」が「弁護士法第72条本文に違反すると評価される可能性があることを否定することはできない」との見解を示した。
グレーゾーン解消制度とは産業競争力強化法に基づく制度であり、事業者が安心して新事業活動を開始できるよう、現行の規制の適用範囲が不明確な場合に内閣府へ問い合わせることで、あらかじめ規制の適用の有無を確認できる制度だ。
同制度において、法令に「違反すると評価される可能性があると考えられる」と指摘されたAIを用いた契約自動レビューサービスだが、現在主流であるのはディープラーニングやルールベースでのアプローチを含む事前言語処理技術を契約領域に応用したシステムである。
9月に設立した「AI・契約レビューテクノロジー協会」(AI and Contract Review Technology Association、略称:ACORTA)は、現時点で実用化されている技術について、「あくまでも、事前に設定または学習された言語情報と対象文書中の言語情報の言語的類似性を踏まえて識別・分類などを行うものに過ぎない」との考えを示している。
また、誤解を招きやすい例として「大量の契約書データを機械学習にかければソフトウェアが勝手に賢くなり、勝手に正確に契約書をレビューしてくれるようになる」を挙げ、現時点では「そのような技術は実用化されていない」と指摘している。
ワーキンググループでは本日の議論を踏まえて、法務業務の効率化およびIT化の進展は大企業だけでなくスタートアップや中小企業にも役立つとして、AI契約書レビューサービスをユーザーが安心して利用できる環境作りを進める方針を示した。
これを受けて、法務省は「イノベーションを促進する観点からAIは有効であり可能な範囲で後押しをしたい」と語った。今後は、弁護士法の適法な範囲での具体的例示やガイドラインの作成を促すようだ。