onsemiは11月8日、オンラインで会見を開き、同社代表取締役社長 兼 CEOのHassane El-Khoury(ハッサーン・エルコーリー)氏がグローバルならびに日本市場の現状などついての説明を行った。

  • onsemi代表取締役社長 兼 CEOのHassane El-Khoury氏

    説明を行ったonsemi代表取締役社長 兼 CEOのHassane El-Khoury氏

同氏は2020年12月に同社CEOに任命されて以降、重要な戦略変更を多数行ってきたという。その最たるものが「インテリジェントパワー」と「インテリジェントセンシング」へのフォーカスによる付加価値の高い製品の顧客への提供だという。同氏は「インテリジェントパワー/センシングへ注力することで、低電力と高性能をトレードオフすることなく、追求することができるようになる。それが、顧客の課題解決を容易にすることにつながる」と説明する。

  • onsemiが近年注力してきた2つのソリューション

    onsemiが近年注力してきたのが「インテリジェントパワー」と「インテリジェントセンシング」という2つのソリューション

そうした同社を取り巻く2022年という年は、「とても忙しい一年」だったという。その忙しさは業績にも表れている。10月31日(米国時間)に発表された、直近の2022年第3四半期の決算も、売上高が四半期別で過去最高となる21億9260万ドル(前年同期比26%増)となっており、5四半期連続で過去最高を更新し続けてきたとする。こうした売り上げの伸びを下支えしてきたのが、LTSA(Long Term supply Agreement:長期供給契約)であり、すでに今後3年間にわたってLTSAを通じて40億ドル分のSiCデバイスの売り上げが確約済みだという。

このLTSAの取り組みは日本市場も同様で、過去6四半期連続で過去最高の売り上げを達成し続けてきたという。「主に自動車メーカーと産業機器メーカーとの間でLTSAを締結しており、その売り上げ規模は日本市場の年間売上高の2倍以上」だとするほか、日本チームが努力してそうした分野を中心にデザインイン活動を推進してきたことで、自動車関連のエレクトロニクス化などにおいて重要なポジションを占めるまでに存在感を高めてきたとする。

  • onsemiの自動車向けソリューションと産業分野向けソリューションのイメージ
  • onsemiの自動車向けソリューションと産業分野向けソリューションのイメージ
  • onsemiの自動車向けソリューションと産業分野向けソリューションのイメージ

エネルギー価格の高騰などもあり、低電力化や高効率化が求められるようになってきた現在、シリコンを用いたパワー半導体よりも高い効率と、システムコストの低減を可能とするSiCに注目が集まってきている。同社もそれを理解しており、重要な新技術に位置づけ、積極的に投資を進めてきている。同社が特徴的なのは、SiCウェハという材料レベルから、SiCデバイスの製造、パッケージング、そしてモジュール化までを自社でカバーしている点だ。「顧客が望む効率性を確保するためには必要」だと同氏は、その理由を説明する。

  • onsemiのSiC戦略

    SiCを基板からデバイス、モジュールまでエンドツーエンドで提供することで高い付加価値を提供することというのが同社の戦略となる

「ウェハからデバイスにわたるエンドツーエンドの供給保証、差別化されたデバイスとパッケージングの提供、インテリジェントパワーおよびセンシングソリューションによる幅広いニーズへの対応、資本効率の高い投資を行うことによるスケーラブルキャパシティの実現などを通じて、成長率の高い市場へのアクセスし続けることで、独自の地位を確立しつつある」とのことで、こうした取り組みは、2040年までのネットゼロを目標に掲げ、企業としても個人としても環境に対する責任を果たす必要があるためであり、電力の効率的な活用を実現する手法を提供することがonsemiとしての役割だとする。

  • 具体的なonsemiの付加価値

    具体的なonsemiの付加価値

また、日本市場での成長に向けては、メガトレンドである自動車の電動化、ADAS/自動運転の進化、産業分野におけるマシンビジョンやファクトリオートメーション(FA)の高度化などに対応するインテリジェントなパワーおよびセンシングに注力していくことで、2倍の市場成長を目指すとしている。

その実現のために、顧客課題の解決を可能とする高度に差別化された製品の提供を進めていくとするほか、SiCの自動車ならびに産業分野への変改による自社の地位向上を目指してエンド・ツー・エンド機能による高い性能と品質の提供を進めていくとする。企業としては、売り上げの増加のみならず、2040年までのネットゼロ実現を目指すともするほか、多様性、公平性、包括性の文化へのコミットメントや自動車死亡事故ゼロの達成に向けたADASの技術革新を進めるなど、よりよい未来の実現に向けた全社的な取り組みなども進めていくとしている。

  • 日本市場での成長に向けたアプローチ

    日本市場での成長に向けたアプローチ

なお、今後の投資計画としては2つの方向性を検討しているとする。1つ目はSiCで、材料から基板(ウェハ)、工場に関する投資まで全般的に強化していくとのことで、ウェハについては2023年末までには大半が内製品で賄えるようになる予定としている。もう1つは300mmウェハへの投資で(同社はGlobalFoundriesから米ニューヨーク州フィッシュキルの300mm工場を2019年に買収。ディスクリートおよびパワー半導体の製造を進めている)、全社投資の90%以上がパワーおよびセンシングに向けたものだとする。日本では新潟工場(小千谷市)の6インチ(150mm)ウェハ工場については売却が決定したが、そのほか会津若松にも8インチ(200mm)ウェハ工場(富士通より買収)を有しており、こちらは戦略的な拠点に位置付けられているという。そのため、生産能力の増強に向けた投資も継続して進められており、新規技術の導入に向けた取り組みも複数年にまたがる形で行われており、今後も活用されていくとしている。