後払い決済サービス(BNPL)を手がけるネットプロテクションズは11月10日、会員制サービス「atone」の機能強化を発表した。ECサイト上でカートに入れた商品を購入せず離脱する「カゴ落ち」の防止やLCV(顧客生涯価値)の向上につなげる機能を追加した。

atoneは、上限5万円までの後払いが可能で、翌月にコンビニや銀行ATMなどで一括で支払える会員サービス。利用額の0.5%がポイントとして貯まり次回利用時の値引きに使えるほか、加盟店が発行する限定クーポンを使うこともできる。2次元コードを使って実店舗で後払い決済を選択することも可能だ。2022年11月現在、520万人の会員基盤があり、会員数は日々増加しているという。

  • 新atoneの仕様

    新atoneの仕様

今回のアップデートでは、atoneに会員登録不要で利用できる「都度後払い」という機能が追加された。従来は会員限定のサービスだったため、会員登録をしなければ利用できなかったが、新atoneでは携帯番号、メールアドレス、6桁の認証コードを入力するSMS認証を行うことで後払いを利用できるようになる。SMS認証を導入することで不正対策にもつながる。

atone会員はこれまで通り、携帯番号とパスワードのみのSMS認証になる。同じ店舗での2回目以降の利用については、自動で認証するため購入者のアクションは不要。多様化するニーズに対応し、カゴ落ちを防ぎ、新規顧客の獲得につなげることを狙う。

  • 新atoneの「都度後払い」

    新atoneの「都度後払い」

また、新しい会員向けの機能として「ログインサービス」を実装。情報入力の手間をなくし、購買手前での離脱防止につなげる。携帯番号とパスワードでログインし、ECサイトに購入者情報が連携され、注文確認画面にスムーズに遷移できるようになった。

  • 新atoneの会員向けサービス:ログインサービス

    新atoneの会員向けサービス:ログインサービス

新型のatoneは、2022年11月10日よりテスト店の受付を開始し、本格リリースは2023年3月以降を予定している。

国内におけるBNPL市場は、EC決済サービス市場の伸びに比例して安定的な成長が見込まれている。矢野経済研究所の調査によると、BNPL市場はCAGR(年平均成長率)が15%を超えており、2025年には1兆9000億円を超える見込みだ。直近3年で後払い決済サービスを手がける企業が2倍になったという調査データもある(出典:インフキュリオン)。

  • 国内後払い決済の市場動向

    国内後払い決済の市場動向

メルカリやPayPayも同市場に参入しており、両社はアプリ内で使えるクレジットカード「バーチャルカード」を開発・提供しており、利用方法を拡充させている。また、2022年に上陸したシンガポール発のPaceは、無利子で3回分割できる後払いサービスを展開中だ

同市場はいま、EC市場のマクロ変化やニーズの広がりに伴い、従来型の後払いスキームからの進化が求められている。

記者説明会に登壇したatoneグループ 事業統括責任者の菊池国行氏は、「従来の提供価値があるのはあたりまえで、付加価値・機能による差別化を模索する戦国時代に突入した。BNPLのリーディングカンパニーとして、新たな後払い決済のかたちを生み出し、ニーズ充足・適用可能市場の拡大を狙う」と、意気込みを見せていた。

  • ネットプロテクションズ atoneグループ 事業統括責任者の菊池国行氏

    ネットプロテクションズ atoneグループ 事業統括責任者の菊池国行氏