パナソニック ホールディングスは11月9日、循環型社会の実現に向け、ガラス扉を採用している冷蔵庫のリサイクル処理に向けた、ガラス扉からガラス板のみを分離する技術を開発したことを発表した。

これまで同社は2014年に、近赤外線センシングを活用して3種類の樹脂を同時選別可能なリサイクル技術を開発したことを発表しているが、今回の技術もそうした同社の掲げる長期環境ビジョン「Panasonic GREEN IMPACT」の実現に向け、廃棄物ゼロを目的に開発された技術となる。

近年の白物家電では、意匠としてガラスを用いることが増えてきており、一説には冷蔵庫の新製品の半数には扉面にガラスが採用されているとも言われているほか、近年では洗濯機にも採用が進んできている。しかし、その一方で、そうしたガラスのリサイクルは進んでおらず、現状はそのほとんどがそのまま破砕され、産業廃棄物として処理されているという。パナソニックでも2008年より、冷蔵庫にガラスを採用したモデルを市場投入しており、発売から10年を越え、今後、買い替え時期を迎えるガラス扉冷蔵庫が増加することが見込まれることから、その処理によって生じる社会課題の解決に向け、今回の技術開発を2019年より進めてきたとする。

  • 冷蔵庫に用いたガラス扉のリサイクル時の課題

    冷蔵庫に用いたガラス扉のリサイクル時の課題 (資料提供:パナソニック)

具体的には、扉表面のガラス板を投下する中心波長1064nmの近赤外パルスレーザーを用いて、ガラスの裏面にある有機塗料(接着剤)を炭化。その後、ガラス面を吸着パッドにて剥離させることで、ガラスの背面に残った炭化した有機塗料も容易に除去することができるため、ガラスの再利用拡大につながるという。また、副次的効果として、ガラス裏の基板なども破砕しないため回収できるようになり、そちらのリサイクルなども期待できるようになるともしている。

  • レーザーを用いたガラス剥離技術の概要

    レーザーを用いたガラス剥離技術の概要 (資料提供:パナソニック)

同社の試験では200Wのレーザーを用いて、1台あたり2分程度で処理を完了できることを確認。今後は、自社内のリサイクルプラントでの量産設備としての検証を2023年度をめどに進め、全国のリサイクルプラントへの導入を進めていくとしているほか、ガラストップ洗濯機やスマートフォン、太陽光パネルなどといったほかの製品にも当該技術の適用を進めていきたいとしている。

  • レーザーによって扉からきれいに取り払われたガラス板

    レーザーによって扉からきれいに取り払われたガラス板。黒い部分は有機塗料が炭化したもの。これも容易に除去できるという (資料提供:パナソニック)

なお、同技術はパナソニック製品のみならず、他社製品でも同様に効果を発揮できることを確認済みとしているほか、処理コストとしては廃棄物処理と比較した場合ではペイできるレベルに仕上がっていると同社では説明している。

パナソニック ホールディングスが開発した冷蔵庫のガラス扉をレーザーで剥離する技術