米Metaは11月9日(現地時間)、全社員の約13%、11,000人以上を削減する計画を発表した。同社が大規模な人員削減を行うのは2004年の創業以来初めて。景気減速の懸念が強まる中、新型コロナ禍後を見据えた成長戦略への大規模な投資が重荷になっていた。体制のスリム化を目指し、雇用凍結の2023年第1四半期までの延長、自由裁量支出の削減、オフィス面積の縮小といった追加的な措置も行っていく。

同日に、CEO(最高経営責任者)のMark Zuckerberg氏が削減に至った経緯と今後について社員に説明するメッセージを一般にも公開した。COVID-19の感染拡大と共に世界のオンライン化が急速に進み、COVID-19収束後も加速度的な成長が継続すると予想してMetaは大規模な投資に踏み切った。しかし、「期待通りの展開にはなりませんでした。オンライン商取引が以前のトレンドに戻っただけでなく、マクロ経済の悪化、競争の激化、広告のシグナルロスなどにより、収益が私の予想をはるかに下回るものとなりました。これは私の間違いで、私に責任があります」と同氏は謝罪した。

2019年末時点で44,900人だったMetaの社員数は、2020年末に58,600人、そして2021年末に72,000人、今年9月末時点で87,300人と、過去2年半で倍近くに増加していた。一方でネットユーザーのプライバシー意識の高まりからAppleがトラッキング対策を強化し、また景気減速懸念から企業が広告予算に慎重になり始めたことで、Metaの収益の柱である広告の需要が低迷。新たな成長ドライバーであるInstagramとTikTokの競争激化など、複数の逆風要因が重なり、Metaの株価は年初から70%以上下落している。

成長の鈍化に対応するために、AI、広告・ビジネスプラットフォーム、メタバースといった優先順位の高い分野へのリソースの集中、効率性を高めるチーム再編、福利厚生の縮小や不動産の縮小といった事業全体のコスト削減などを行ってきたが、収益の見通しは年初の予想より低く、それらだけではバランスをとれなかった。人員削減はFacebookやInstagramなどを手掛ける「Family of Apps」やメタバース戦略のコアである「Reality Labs」を含む組織全体で実施し、米国外も対象とする。

機密情報を保護するために、9日から削減対象となる社員の電子メールを含む社内システムへのアクセスを遮断する。米国では大規模な人員削減を行う際に60日前の通知が義務付けられているが、対象となる社員には「60日前の通知」の条件を満たす基本給の16週間分と勤続期間に応じた加算分を支給する。

さらにインフラ支出の見直しも進めている。ただし、インフラをMetaの重要なアドバンテージとする姿勢に変わりはなく、より少ないコストで実現していくことで、利益性の高いコアビジネスの強みをさらに引き出し、将来の大きな可能性であるAIやReality Labsの効率的な運用を目指す。